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「離婚するなら親権は渡さない。お前がこれまでしてきたことを考えれば、オレに慰謝料として300万円ほど払う必要がある」

 明奈は忠志の支配下に置かれ、誓約書を書かされ、まともな思考回路さえできなくなっていった。

 コロナ禍の直前になると、明奈はホテルの清掃の仕事をしていた。月収は12万~13万円。それで一家4人が生活していた。忠志は働かずに一日中、家でゲームをしていた。失業保険にも入っていなかったので、収入もなかった。

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 ところが、明奈も緊急事態宣言が出た直後に「しばらく休んでくれ」と言われ、仕事を失った。代わりに飲食店で仕事をし始めたが、そんな状態でも忠志は仕事をしなかった。

 仕方なく風俗店に復帰したが、すぐにバレてしまい、忠志から「またか!」と叱責された。明奈はすべてがイヤになり、「離婚したい」という書き置きを残して実家に戻った。

 だが、最終的には子どもたちのことが心配になって、忠志のいる家に戻った。明奈は忠志の言動におびえ、飼い殺しにされ、彼の目を見て話すこともできなくなった。

ボーガンを使えば、殺せるんじゃないか

 そんなとき、近隣都市で家族ら4人がボーガン(洋弓銃)で殺傷されるという事件を報道で見た。身長182センチの忠志と身長157センチの明奈では体格差がありすぎる。でも、ボーガンを使えば、殺せるんじゃないか。

写真はイメージ ©getty

 忠志から離れるには殺すしかないという考えに取りつかれた明奈は、ネットで見つけた専門店でボーガンと弓矢と付属品を購入した。威力を試すため、洗面所の壁に撃ってみた。ズブリと穴が空いた。これなら殺せるかもしれない。

 でも、そんなことをしたら、子どもたちが犯罪者の子どもになってしまうのではないか。そんな葛藤を抱えながら、3週間が過ぎた。