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「最初から権力奪取が目的ではなかった」
当時の事件をよく知る町田貢元駐韓日本公使は「全斗煥は合同捜査本部長の職責を果たそうとしただけで、最初から権力奪取を目的に事件を起こしたわけではない」と語る。
ただ、結果的に、鄭氏を逮捕したことで、全氏とハナフェは軍の実権を握った上、全斗煥氏は1980年9月、大統領に就任することになる。元将校は「もう大統領まで出したんだから、ハナフェもいらないだろうという話になった」と語る。1980年の陸士36期を最後に、ハナフェは新しい会員の募集を停止した。
尹錫悦大統領による戒厳令にみる韓国軍人の変容
こうした運命をたどったハナフェ元会員の元陸軍将校は、今回の尹錫悦大統領による戒厳令をどう見ているのだろうか。元将校は「今回の戒厳令はあってはならないこと」と強く批判する一方、45年前と現在の韓国軍・韓国軍人の落差に愕然としたとも語る。
粛軍クーデター当時、保安司令部が軍隊内部の通信網をすべて抑えていた。盗聴を通じ、鄭昇和参謀総長側の動きをすべてつかみ、鎮圧に回ろうとする部隊を先んじて制圧した。元将校は当時、ソウルの部隊に勤務していたが、全く粛軍クーデターの計画を知らなかった。銃撃戦の発生後、ソウル市内の漢江にかかる橋が封鎖された事実などから、ようやく異変を察知したという。