1ページ目から読む
4/4ページ目
鈴木が20代から常連だったという、もう一軒のスナックのZママは、取材する私に呆れ顔で言い切る。
「鈴木の印象はとにかく性欲が強いということ。どこどこの店に行って(性行為を)したんやけど、どうやったとか、そういう話ばかりしてましたから。あと、『奥さんがさせてくれん』ともこぼしていました。
事件を起こす1、2年前からうちの女の子にご執心で、おみやげを持ってきたり、その子がつくとフルーツ盛りを頼んだりしていたんですね。それで一度、鈴木が彼女におみやげとして持ってきた焼き鳥を、他のお客さんにも振る舞ったことがあるんです。その途端にふて腐れてしまい、慌てて私がとりなした記憶があります」
「もし行っとったら私が殺されとったかも」
この店では鈴木を要注意人物として認識していたようだ。
「だいたい午後8時半とか9時に来て、午前1時半とか2時のラストまでいましたね。目的はお気に入りの子をアフターに誘うことでしたけど、危ないから二人きりでは行かせずに、私やもう一人の子が一緒に付いていくようにしてました。
そういえば、別のスナックのフィリピン人の女の子は、事件を起こしとる最中に、鈴木から3回くらい昼ごはんに誘われとるんです。全部断ったみたいですけど、『もし行っとったら私が殺されとったかも』と話していました」
3人を殺害してもなお、鈴木はみずからの行動を改めることはなく、これまで通りに夜の街へ出ては、無邪気に遊んでいたのである。その、反省のかけらもない、底抜けに無感覚な姿には、ただただ恐れを抱いてしまう。
小野 一光(おの・いっこう)
ノンフィクションライター
1966年生まれ。福岡県北九州市出身。雑誌編集者、雑誌記者を経てノンフィクションライターに。「戦場から風俗まで」をテーマに北九州監禁殺人事件、アフガニスタン内戦、東日本大震災などを取材し、週刊誌や月刊誌を中心に執筆。著作に『完全犯罪捜査マニュアル』『東京二重生活』『風俗ライター、戦場へ行く』などがある。
ノンフィクションライター
1966年生まれ。福岡県北九州市出身。雑誌編集者、雑誌記者を経てノンフィクションライターに。「戦場から風俗まで」をテーマに北九州監禁殺人事件、アフガニスタン内戦、東日本大震災などを取材し、週刊誌や月刊誌を中心に執筆。著作に『完全犯罪捜査マニュアル』『東京二重生活』『風俗ライター、戦場へ行く』などがある。