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「当然我々は訴訟も考えますよ。」
日鉄でUSスチール買収の陣頭指揮をとっていたのが、橋本英二会長だ。
「営業一筋の橋本氏は2019年に社長に就任。当時の社内状況は、橋本氏が周囲に『資金流出がひどすぎる。このままだと後3年で会社は潰れる』と漏らすほど。橋本氏は国内高炉の廃止など不採算事業を整理し、年間8000億円の経常利益を安定して生み出せる企業に変身させました。
また政財界に人脈を広げ、林芳正官房長官、齋藤健前経産相、DeNAの南場智子会長らは橋本応援団の一員です」(日鉄の別の幹部)
11月の米大統領選直後、橋本氏は小誌の取材に強気でこう語っていた。
「これがね、正当な理由もなく、正式な手続きも経ないまま駄目になるってことであれば、当然我々は訴訟も考えますよ。アメリカ政府に対して。我々は訴訟もあるべしというぐらいの覚悟でやってんだよ」
トランプ氏の意向
だが、大統領令が出た直後、橋本氏の携帯電話を鳴らすと、暗い声で「取材、お断りします」と語った。
次期大統領のトランプ氏はかねて買収を認めない意向を示しており、打開の道筋は描けていない。
「ただ日鉄がアメリカに対し、どれだけの投資や雇用を約束しているか、トランプ氏はまだ十分理解していないはず」(経産省幹部)
今後は日鉄が米政府の決定を覆すための裁判を続ける間に、トランプ大統領をディールに引き込めるかどうかが焦点になりそうだ。