“宗主国”となったGAFAMによる「デジタル植民地主義」。日本はすでに「デジタル小作人」になった……。読売新聞編集委員の若江雅子氏が、現状に警鐘を鳴らす。

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国家を凌ぐほどの「権力」

 17世紀の思想家、トマス・ホッブズは国家を「リヴァイアサン」、それに対抗する教会などの勢力を異形の怪獣「ビヒモス」に喩えた。憲法が専門の山本龍彦・慶應大教授はこれになぞらえ、GAFAMなどを「現代のビヒモス」と呼ぶ。国家の力を凌ぐほどの「権力」をもち、国家の権力行使のありようをコントロールし始めているとみるからだろう。

 たしかに彼らは一国の人口を数で大きく上回る利用者を抱える。アンドロイドOSユーザーは世界で33億人。iPhoneユーザーは10億人以上と言われ、日本の人口のそれぞれ27倍と8倍だ。しかも彼らは、提供するサービスを通じて膨大なデータを収集し、ユーザーの行動や内面を把握する。さらには、それに基づいてユーザーの行動や精神状態を誘導する力ももつ。まさに主権国家に対抗しうる「ビヒモス」の名に相応しい。それでも欧州は「法」を武器に「ビヒモス」をコントロールし、主導権を奪い返そうと奮闘している。日本はどうするのか。

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ユーチューバーのマネジメント会社、UUUMは2023年5月期決算で10億円以上の赤字 ©NurPhoto via AFP

日本の「デジタル植民地化」

 南アフリカ出身の社会学者、マイケル・クェット氏が2019年に発表した論文に「デジタル植民地主義――アメリカ帝国とグローバルサウスにおける新帝国主義」がある。

 デジタル植民地主義とは、「土地」の代わりに「デジタル技術」を用いて外国を「植民地」として支配していくという考え方だ。クェット氏によれば、途上国の人々は、GAFAMのようなビッグテックのサービスに依存していくなかで、経済的、技術的、文化的な侵略を受けている。

 南半球の国々だけの話だろうか。日本における検索エンジン市場シェアの8割弱はグーグルが占める。OSはグーグルとマイクロソフトとアップルのみ。EC(電子商取引)市場トップはアマゾン、SNSは1位こそLINEだが、2位以降はYouTube、Instagram、X、TikTok、Facebookと海外勢が続くのだ。