会社清算、会社更生法・民事再生法適用など様々な形での倒産が急増している。円安、資源高、人件費の高騰などに見舞われ、資金繰りに窮する企業が相次いでいるのだ。

 ここでは、60年にわたって「倒産」の現実を取材・分析しつづけてきた帝国データバンク情報統括部による新著『なぜ倒産 運命の分かれ道』(講談社)より一部を抜粋。急成長していた中小企業向けコンサルティング会社・北浜グローバル経営株式会社(以下、北浜G)が倒産した理由とは——。(全2回の2回目/1回目から続く)

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人材育成追い付かず? 採択率が急低下

 北浜Gに異変が起きたのは2023年春。同年1月から3月にかけて公募された事業再構築補助金の第9回の採択結果が公表され、北浜Gが申請に関わった案件の採択率が36.0%にまで落ちたのだ。

 ところが、全体の採択率はそれ以前とほぼ変わらない。そうなると、採択率低下の原因を案件そのものの内容の低下といった、外的な事象に求めるのは難しい。矢継ぎ早の人員補充で教育・研修が追い付かないなど、「プロフェッショナル未満」のスタッフが増え過ぎてしまったという、内的要因であると考えるべきだろう。

 ちょうどこの頃、提携金融機関の審査担当者が、とあるつなぎ資金の案件に関して補助金申請の進捗確認を行ったのだという。その際に、完成前の申請書類の一部を見て「申請が通るとは思えない出来映えと感じた」ように、明らかな“質”の低下が露見していた。

 そして、北浜G自身もある提携金融機関に融資を打診したが、謝絶されている。その交渉の場に居合わせた融資担当者は「1000万円でも2000万円でもいい、という切羽詰まった口ぶりだった」と当時を振り返る。

©AFLO 写真はイメージ

受託案件増加で膨らみ続けた先行支出

 ここで、北浜Gにおける資金の流れをあらためて確認しておこう。補助金申請コンサルを始めたころの報酬体系は、完全成功報酬型。事業計画や資金計画の作成などをサポートし、無事に採択されたことを条件に「成功報酬」を受領する決まりだった。つまり、着手から採択までの間に要したコストが先行支出となり、成功報酬で回収する資金パターンで、受託案件が増えれば増えるほど、営業キャッシュフローのマイナスが大きくなる状態にあった。

 しかし、実際には、着手から採択まで数ヵ月を要することも少なくなかった。営業キャッシュフローのマイナスが大きくなるなか、借入金で資金を手当てしていたが、それでは足りず、着手時に補助金申請者から一部を「手付け」として前受けする方式に切り替えたほどだ。

 特に2022年以降は、大規模な人員補充による人件費の増加と、本店移転に伴う家賃の増加により、先行支出は以前とは比べようもないほど大きなものとなって、借入金残高もみるみるうちに膨らんでいった。それでも、この時点で倒産に至るとは誰も予想だにしなかったことだろう。