“時代を作った人たち”の本音に迫る対談企画「有働由美子のマイフェアパーソン」。今回は、TVキャスターの草野仁さんが仕事の中で意識していたことについて振り返った。
数字が振るわないと、鬱になるんじゃないかと……
有働 視聴率を見て落ち込むことはありませんか? 私は民放のニュース番組を担当するようになって、数字が振るわないと、鬱になるんじゃないかと思うほど悩みました。
草野 視聴率は気にはなりますが、気にし過ぎてもいけない。「とにかく全力を尽くしてやるしかない」という気持ちで取り組み続けることが大事なのだと思います。
有働 また、NHK出身のアナウンサーは「品が良くてきちんとニュースを読めて賢いに違いない」というイメージで得をしてきた面もありますが、「派手な格好をするな」「自分の意見を言うな」と叩かれたりもします。時代の変化で個性が求められたかと思えば、SNS時代だからこそ普通であれという揺り戻しが来ることもある。私自身、視聴者から苦情が来て、ディレクターから注意されることで型にはまってしまった時期もあったので悩ましいです。
草野 最近、NHKの定時のニュースは、冒頭だけアナウンサーが読んで、あとはAIがアナウンスをするという番組が増えています。
有働 あれ、ビックリしますね。
草野 将来的にはAIに取って代わられる番組が増えるのでしょう。だからこそ、アナウンサーが人間として自分の意思や分析力を反映した発信を心がけないと、存在感を認められない時代に、ますますなっていくのではないかと思っています。
「女にだけは気をつけろよ」
有働 草野さんは時代を意識して、ここは変えた、もしくは変えなかったことはありますか?
草野 まず、時代にかかわらず、やってはいけないことがいくつかあると思うんです。我々のように放送の前線に立って、時に人を批判することもある人間は、後ろ指を指されるようなことは絶対してはいけない。立場は違いますが、国民民主党の玉木雄一郎さんが鋭い政策提言をしていたのに、不倫が発覚したことで信頼を失ってしまいました。
有働 たしかに!
草野 私がNHKを退職する際、ある先輩アナウンサーから、「お前、女にだけは気をつけろよ」と忠告されました。その先輩がよく知る別のベテランアナウンサーが、週刊誌に不倫の証拠写真を撮られたという話でした。4カ月ほど追い続けた結果だったそうで、「週刊誌は追いかけ出したらしつこく来るから気をつけろ」と。
有働 草野さんはその点、バレないようにしたのですか、あるいはそもそもしないようにしたのですか?