草野 愛人を作ったことはないですねぇ。当たり前ですが、そういう素行には気をつけてきました。

 有働 すばらしい。他にも心がけていらっしゃることはありますか?

 草野 基本的にスタッフみんなと仲良く一緒にやろうという機運を醸成することです。それが結局、番組を長続きさせることに繋がったかなと思います。時には肉でも食べにいこうとスタッフを誘い、自分のいろんな体験談を話しました。皆、私より若いですから、素直に耳を傾けてくれます。長く番組を続けていると当然、技術系のスタッフも世代交代があります。それでも番組全体が不思議なほど、良くまとまっていたという印象があります。

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 有働 草野さんからの声掛けやコミュニケーションによって、一体感が生まれたのだと思います。

フリーアナとしての苦悩も先輩に吐露した Ⓒ文藝春秋

 草野 少なくともあまり嫌われてはいなかったかもしれないですし、やはりチームワークがないとダメですから。収録していて、たとえばスタッフがミスをしたとしても「すみません。ミスがあったのでもう一回お願いします」と素直に言えるような関係性ではありました。

 有働 なるほど〜。不倫とチームワークに気をつける、とさっそくメモさせていただきました。ちなみに、ご家庭ではどんな夫ですか?

九州男児が改心したワケ

 草野 育ったのがとても古い時代ですから、NHK時代は完全な亭主関白でした。

 有働 ザ・九州男児ですね。

 草野 でも、フリーになってからのある日のこと。朝7時からの番組があったので私は3時に起きていましたが、妻はさらに30分ほど前には起きていて、部屋を暖めてお茶を淹れてフルーツなんかを用意してくれていたことに、ようやく気がついたのです。「今まで考えたこともなかったけど、大変だったんだな」と、妻の苦労に目が向きました。

 有働 それはご結婚されてから何年目くらいのことですか?

 草野 17年ほど経っています。

 有働 お気づきになるまで、かなりの歳月がかかりましたね(笑)。

 草野 環境が変わって、初めて自覚できたのです。息子たちも「お母さんをもっと大事にしなさいよ」と、言ってくれました。そういう意味では、まあまあ仲の良い家族だと思っております。

※本記事の全文(約9000字)は「文藝春秋」2025年2月号と「文藝春秋 電子版」でご覧ください(草野仁×有働由美子「マスコミは真実に肉薄しようという力が弱い」)。

全文では、有働さんが草野さんに深く感謝していること、草野さんがNHK退職を決意した経緯、地下鉄サリン事件への「予言」、アナウンサーの存在意義、草野さんが提唱したい「競馬健康法」などについて語られています。

 

■連載「有働由美子のマイフェアパーソン」

第60回 大石静(脚本家)
第61回 小泉今日子 (「明後日」代表)
第62回 東出昌大(俳優)
第65回 草彅剛(俳優)
第68回 広末涼子(俳優)
第72回 増田惠子(歌手)