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長時間労働の元凶「給特法」をどう変えていくか

 給特法は、(1)職場の時間管理を不要にし、(2)使用者(国、自治体)や管理職から、残業抑止の動機付けを奪ってきた。それが無際限に残業を増やしてきた。

 私たちは一刻も早く、給特法のあり方を検討しなければならない。

 その方法を二つの極にわけると、一方の極に給特法の遵守を徹底する方法があり、もう一方の極に給特法の廃止を求める方法がありうる。

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 前者は、法的に残業がないのであれば、さっさと定時に帰宅しようという考えである。そして後者は、民間企業と同じように、労働基準法(罰則付きの上限規制)の力を借りて、残業の拡大に歯止めをかけようという考えである(詳細は拙稿『教師のブラック残業』(2018年6月7日刊行予定/学陽書房)。

教師のブラック残業

(著)

学陽書房
2018年6月7日 発売

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 私自身は後者の給特法廃止に近い考え方をとっている。すなわち、長時間労働の元凶たる給特法を、根本的に変えていくのである。

 労働時間と賃金を関連づけて、実労働を法的に労働と認める。時間管理を必須のものとし、使用者側に残業抑止の動機を生み出すことをとおして、長時間労働の抑制を企図する。

9000億円分のただ働き

 しかしながら,遵守/廃止いずれにとっても最大のハードルがある。財源の確保だ。

 公立校教員のただ働き分は、約9000億円と試算されている(中央教育審議会 初等中等教育分科会 学校における働き方改革特別部会の第8回議事録)。

©iStock.com

 給特法遵守であれば、先生たちが定時に職員室に置いて帰った9000億円分の仕事を、誰かがやらなければならない。また廃止であれば、割増賃金を適用すると9000億円をさらに超える支払額が必要となる。いずれも絶望的に巨大な額だ。

 それもそのはず。50年近く、歯止めなきままに、残業が増えてきた。この蓄積はそう簡単に解消できるわけがない。だが、希望はある。国はいま、教員の働き方に熱いまなざしを注いでいる。

 文部科学省の中央教育審議会は、これから給特法のあり方について審議を進める予定である。また、文部科学省と厚生労働省は、大学教員や過労死遺族らで構成する「教職員の働き方改革推進プロジェクト」主催のシンポジウム(2018年6月1日開催)に、「後援」として企画をバックアップしてくれた。

 財源が限られるなか、変形労働時間制や、労働時間貯蓄制度、教職調整額の増額など、現在さまざまなアイディアが提出されている。いずれにしても、労働時間と賃金の関係が取り結ばれること、これを教員の働き方改革の大前提としなければならない。