5月31日、衆院本会議で働き方改革関連法案が賛成多数で可決された。法案の柱の一つが「高度プロフェッショナル制度」(高プロ)である。
労働時間と賃金の関係を切り離すこの制度は「定額働かせ放題」であることによって、長時間労働さらには過労死を助長しかねないと危惧されている。
じつはこの「定額働かせ放題」を約50年前から取り入れている業界がある。公立校の教員だ。そしてつい先日、富山県の公立校教員が県内ではじめて過労死と認定されたとの報道があったばかりである。
「定額働かせ放題」の先行事例である公立校では、半世紀の間に何が起きたのか。その帰結と、これからの改革の方向性を探る。
ずぶずぶと残業が拡大
半世紀前に公立校教員の「定額働かせ放題」を規定したのは、「公立の義務教育諸学校等の教育職員の給与等に関する特別措置法」(以下「給特法」)という法律である。
給特法は、このところ教育界のなかでにわかに耳目に触れるようになった、働き方改革の最重要キーワードである。
教員の月給を「教職調整額」として4%上乗せすることと引き換えに、残業(代)を「なし」とした法律であり,これによって労働時間と賃金の関係が切り離されてしまった。その結果、時間外の実労働が管理されず、ずぶずぶと残業の拡大をゆるしてしまったのである(詳しくは、「教員の過労死63人も「氷山の一角」 “ブラック職員室”の実態」)。
教員の働き方は高度プロフェッショナル制度の先行事例
「定額働かせ放題」という意味で、教員の働き方は、裁量労働制や高度プロフェッショナル制度の先を行く事例である。連合の神津里季生会長は、次のように語る。
「学校の先生方は昭和47年から46年間もの長きにわたって、給特法(公立の義務教育諸学校等の教育職員の給与等に関する特別措置法)というしばりがかけられ(略)高度プロフェッショナルが危ない、裁量労働制の拡大が危ないといって、いや実は教職員の世界は既に危ない橋を渡り続けてきているのだ」(『サンデー毎日』2017年9月10日号)
1971年に制定された給特法は、半世紀にわたって残業の拡大をゆるしてきた。教員は、過労死が眼下に見える「危ない橋」を渡りつづけており、その最悪の事態が実際に起きてしまっているのである。