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どうして1092項目もの怪異事典を作ろうと思ったのか?

――いわば個人出版していたものが、どうして商業出版されることになったんですか?

朝里 都市伝説を民俗学的に研究されている伊藤慎吾先生が、笠間書院の編集者に「この本、面白い」って紹介してくれたそうで、それが縁で市販されることになったんです。

 

――市販されての反響は、さらに大きかったですか?

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朝里 はい。うれしかったのは「こういうのが欲しかったんだ」という声ですね(笑)。

――需要があったんですね! しかし、またどうして1092項目もの怪異話や怪談、言い伝えを収集して一冊にしようと思ったんですか?

朝里 そういう本が見当たらなかったからです。私は1990年生まれで、ちょうど「学校の怪談」ブームが直撃した世代ですが、あのころ誰もが知っていて怖がったような「トイレの花子さん」の起源とか、「学校の七不思議」のパターンを知る方法がないんです。それで、これは自分で書くしかないだろうと。

――使命感ですね。

朝里 誰に言われたわけでもない、勝手なものですが(笑)。

 

ヤフーカテゴリの「妖怪」とか「民俗学」が大好きだった

――怪談のそもそもを調べたくなるくらいですから、朝里さんは昔から相当な「怪談マニア」だったんですよね?

朝里 そうですね。もともとは子どものころ観ていた「ゲゲゲの鬼太郎」や「地獄先生ぬ〜べ〜」の影響で妖怪好きになったのが原点です。そのあと10代になった2000年前後に家でパソコンができるようになって、都市伝説を集めたサイトにハマり出すんです。ヤフーカテゴリに「妖怪」とか「民俗学」っていうのがあって、その中で紹介されている不思議な話、怖い話を読むのが大好きだったんですよ。で、大学に入ると読むだけでは満足できなくなって、ついに調べたり、収集を始めます。

 

――大学の卒論はもちろん……。

朝里 妖怪です。でも、上田秋成の『雨月物語』などの近世文学に出てくる妖怪ではなくて、古事記や日本書紀に記述されている妖怪めいたものを扱ったものなので、先生は困ってましたね。こんな論文見たことがないって(笑)。一応卒業できましたけど。