モルドヴィア・アリーナ 日本初戦の舞台
6月19日に日本の初戦、対コロンビア戦が行われる予定のモルドヴィア・アリーナは、モルドヴィア共和国の首都サランスクに、今年4月にオープンした。太陽を表す赤や、サランスクの紋章の狐を表すオレンジのプレートに覆われた、とてもカラフルなスタジアムだ。その特色は、何といってもコンパクトさにある。フィールドから観客席までの距離は、最長でも90メートル。臨場感を重視するなら、断然モルドヴィア・アリーナでの観戦をお勧めする。
ヴォルゴグラード・アリーナ 第二次大戦の激戦地に
日本・ポーランド戦の会場となるヴォルゴグラード・アリーナは、新設スタジアムの中では出色のデザインといえよう。外から内へ徐々に細く繊細になっていく壁面のトラス構造は、自転車のスポークをヒントに設計されている。またヴォルゴグラード(旧スターリングラード)は第二次大戦の激戦地でもあり、スタジアム付近のママエフの丘では、全長85メートルの《母なる祖国》像など、ロシアらしい巨大なスケールの戦争モニュメントを見ることができる。
ニジニ・ノヴゴロド 速やかな廃墟化が懸念される
鉄筋コンクリートの巨大な列柱が屋根を支えるニジニ・ノヴゴロド・スタジアムは、開放的なデザインが一見格好よく見えるかもしれない。だが、思い出してほしい。ここは氷点下の気温が半年以上続くロシアだ。ほぼ吹きさらしのこの構造は、選手・観客・芝生のいずれにとっても過酷すぎる。オープンの1か月前になってようやく事態に気付いたニジニ・ノヴゴロド市議会は、担当建築家に事情を問いただしたが、明らかに遅すぎた。同スタジアムはW杯後に速やかに廃墟化するのではないかと、今から懸念されている。
ロストフ・アリーナ 工期延長とストの果てに
当初の設計図によれば、ロストフ・アリーナはスタジアム脇のドン河をモチーフとする、二枚の屈曲した屋根をもつはずだった。だがここでも予算超過のため、元の優美な曲線からなる屋根は、何の変哲もない長方形へと変更を余儀なくされた。設計・施工を担当したゼネコン、クロッカス・グループは大規模なスポーツ施設の経験がなく、度重なる工期の延長や給与未払による労働者のストなど、竣工まで問題の絶えなかったスタジアムである。