「財務省は大阪高裁の判決に従え~、上告はするな~、文書を出せ~!」

 真冬の官庁街に訴えが響いた。

 事の始まりは大阪府豊中市の国有地だ。教育勅語を幼稚園児に朗唱させる教育で知られた森友学園がここで小学校の設立を計画した。名誉校長には時の安倍晋三首相の妻、昭恵氏が就任。森友学園の教育をSNSなどで称賛していた。財務省近畿財務局は国有地を鑑定価格から8億円以上も値引きし、1億3400万円で売り払った。

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問題の国有地には森友学園の校舎がほぼ完成している

 8年前、この事実が発覚すると「首相の妻への忖度ではないか?」と国会で追及が始まる。すると安倍首相(当時)は答弁で言い切った。

「私や妻が関係していれば、総理大臣も国会議員も辞める」

 これがきっかけで財務省は取り引きの文書の改ざんを始める。安倍昭恵氏の名前はすべて消された。その時、近畿財務局で作業をさせられたのが赤木俊夫さんだ。改ざんを苦にうつ病になり、1年後、命を絶った。

改ざんの1年前、元気だった赤木俊夫さん(京都・北野天満宮)

「不開示決定を取り消す」と逆転勝訴を勝ち取った

 国有地巨額値引きと公文書改ざん。森友事件の真相は明らかになっていない。なぜ夫は追い詰められたのか? 妻の赤木雅子さんは財務省に関連文書の開示を請求した。事件の捜査で財務省が大阪地検特捜部に任意提出し、捜査が終わって返却された文書だ。ところが開示は認められず、文書があるかどうかすら答えてもらえない。

 そこで不開示の決定を取り消すよう求めて裁判を起こした。一審では訴えが退けられたが、今年1月30日、大阪高裁の控訴審判決では「不開示決定を取り消す」と逆転勝訴を勝ち取った。喜びに沸く傍聴席には、因縁の国有地がある地元・豊中市の木村真市議会議員の姿もあった。

高裁判決の主文には「原判決を取り消す」