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昨年、中国人の187人に1人が日本に来ました。では韓国人は何人来た?――内田樹×平田オリザ×藻谷浩介

内田樹×平田オリザ×藻谷浩介が語る「人口減少社会」#2

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普通に出会えて、恋愛して、結婚して

藻谷 直近の4~5年で各地域の0~4歳児の増減を確認できる資料を作ったのですが、やはり奈義町は大きく増えていました。東京のような電脳化してバーチャルな世界に生きていると、ふと気がつくと子供ができるチャンスを失う、もっと言えば、そもそも出会うチャンスを失う人も多い。田舎で子育てしながら、仕事でも活躍するライフスタイルを採用する女性が今後もっと増えていく気がしています。先ほど別のところで、地域で面白い活動をしている女性たち3人と話してきたのですが、全員地方でお子さんもいながら、東京で登壇したりして、いきいきと活動している。そういうのが自然にやれているんですよね。

平田 普通に出会えて、普通に恋愛して、結婚して、子供を産める環境というのがとても大事で、東京ではその「普通」が逆転してしまっている。私たちの用語を使うなら、素朴な身体性が失われているということですね。だから身体性を回復すれば、5人産む人もいれば結婚しない人もいていいわけだけど、全体の平均値として出生率が2点台前後ぐらいにはなるんじゃないか。

藻谷 田舎の自然の中にいるだけで、身体性を取り戻せる部分は大きいと思います。あうんの呼吸のような、言葉のない体のコミュニケーション力のようなものも。それこそ、内田先生は合気道をなさっているし、平田さんは演劇をしているから、コミュニケーションの達人なわけですが、昨今、本当に対話が成立しなくなって、みんな何を考えているか分からないことが増えたと思いませんか。たとえば安倍支持者と反対派がブログやツイッターでディスっている言葉を読むと、互いにものすごく言葉がすれ違ってしまっている。批判をかわす時、「おまえだってやったじゃないか!」という語法も流行っていますが、あれではコミュニケーションが成立しない。

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内田樹さん ©鈴木七絵/文藝春秋

むき出しの嘘がいまのリアルなんて

内田 近年すごく流行りだした論法ですよね。あれはもともとソ連が欧米諸国から国内の人権弾圧とかについて指摘されると、「おまえらだって19世紀に植民地やったじゃないか!」って打ち返していた手法なんです。「どの口が言うか」ですね。「君たちにわれわれを批判するような倫理的な優位性はない」と言えば反論できる。Whataboutism、「そっちこそどうなんだ主義」という手法です。

藻谷 皮肉にも、保守と称する陣営がまさにソビエトの忠実なる後継者としてそれを採用しているわけですね。平田さんの劇でもそういう人物たちを出したら……。

平田 あんな人たちを出したらリアリティがないって言われますよ!(笑)とくに国会答弁で虚偽を重ねている官僚たちとか、絶対無理。嘘ついてるのがすぐわかっちゃう登場人物では、作劇上ストーリーを組み立てられないし(笑)。

内田 でも、むき出しの嘘がいまのリアルなんですよね。いまの日本の政府中枢は日本でもっとも退廃的ですね。「記憶にない」とか「知らない」とか、自分自身の知性の不調を申告すると全部免罪されると思っている。ここまできたら、もうね、政治家や官僚が「問題ありません」「記憶にないです」とか答弁するたびに、全員爆笑すればいいと思う。キーワードがあって、「仮定の質問にはお答えできません」とか言ったら全員がドッと笑う。「ほら、また言ったー!」って、指差して。

(会場爆笑) 

藻谷 なるほど!

内田 これやったらね、さすがにあの菅官房長官でも「まったく問題ない」って決まり文句を言った瞬間に全員笑い出したら、持たないと思うんですけどね(笑)。