豊川さんが演じたのは聴覚障害がある新進気鋭の画家で、そんな彼に恋をする女優の卵を常盤さんが演じていました。

『愛していると言ってくれ』での常盤さんの役柄は“明るく、健気で、芯が強い”女性でしたが、振り返ると『Beautiful Life』、『カバチタレ!』、『ロング・ラブレター』、『グッドワイフ』などで演じた主人公も、どこか似ている“明るく、健気で、芯が強い”女性。もちろん肩書きや境遇などはそれぞれの作品で違いますし、悲しんだり落ち込んだり苦しんだりするシーンもありましたが、そうした共通点があったのです。

 しかし、実はブレイク前夜となる1993年、そのイメージとは真逆とも言える役柄に体当たりで挑んでいました。

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1993年の“問題作”で胸をあらわにしたヌードシーン

第35回東京国際映画祭のレッドカーペットに登場した常盤貴子(2022年) ©時事通信社

 1993年、カルト的な人気を誇ったドラマが、フジテレビ系で21時台に放送されていました。そのドラマとは『悪魔のKISS』。奥山佳恵さん、深津絵里さん、そして当時21歳だった常盤さんによるトリプル主演作です。

 地元・静岡の中学校で友達だった3人が東京で再会するのですが、性的暴行や新興宗教、借金地獄、覚醒剤中毒など、主人公たちが次々と渦中に巻き込まれていくという凄惨かつカオスなストーリーで、リアルタイムで視聴していた当時、筆者は衝撃を受けました。

 大ブレイクのきっかけとなった『愛していると言ってくれ』より2年も前に、GP(ゴールデン・プライム)帯のドラマに主演していたことを不思議に思う人もいるかもしれません。

 この頃の常盤さんは知る人ぞ知る役者。現代の地上波ドラマでは考えられませんが、『悪魔のKISS』では常盤さん演じる女子大生が風俗嬢デビューする胸をあらわにしたヌードシーンがあったのです。この体当たり演技をきっかけに、知名度が上昇していきます。