同日、産経新聞には何と書かれていたか

『円満会談 安倍氏が礎』(一面トップ記事)

《安倍晋三元首相がトランプ氏と築いた親密な関係が、円満な会談を演出した。》

 すべては安倍さんのおかげだった。石破に手柄なんてない。そんなムードが漂う。一面コラム「産経抄」も会談の成果は石破首相が引き出したものではなく、「亡き安倍晋三首相の時代から、築いた信頼関係を下地として、両政府が有益な議論を重ねた証しだろう」と書いていた。

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安倍晋三氏 ©時事通信

 ここまで読んで気づいたことがある。石破首相の振る舞いについてイライラしている言説を調べてみると、安倍元首相を応援していた人々と親和性が高いことに気づくのだ。冒頭に紹介した産経記事には「与野党や識者からは、今後の日本外交を懸念する声も上がっている」とあったが、ここでいう与党とは自民党安倍派議員、野党は日本保守党議員、「識者」とは安倍氏に関する著作がある作家だった。

本当に首相の「振る舞い」を問うなら…

 安倍氏の支持者からすると、かつて安倍氏を批判していた石破氏が首相となった今の状況は受け入れ難いのだろう。政策はもちろん振る舞いから許せない、安倍さんのほうがよかった、それに比べて石破なんてマナーすら……という。なのでトランプ大統領が少しでも石破首相を褒めようものなら複雑な気分になってしまう。だからイライラしてしまうのではないか。

 興味深いのは、テレビでよく見る「マナー講師」に対してはネット、SNSは厳しいことだ。マナー、マナーと言う講師に対し「失礼クリエイター」という呼称がついたこともある。しかし石破氏に対しては安倍氏の支持者がマナー講師になっているようにも見える。もちろんバラエティー番組でショーアップされたマナー解説と、首相の国際的な場でのマナー論議はレベルが違う。でも本当に首相の「振る舞い」を問うなら仕草だけでなく他にもたくさんある。