自家用車に代わる「生活の足」はあるか

 しかし現実的な問題として、自治体による補助制度が、免許返納のデメリットを十分に埋め合わせるとは考えにくい。自家用車を活用した日本版ライドシェアや、予約型のオンデマンドバスといった新たなモビリティサービスも、現状ではまだ実証段階にある。生活に根ざした移動の足として、自家用車に立ち替わる手段は確立されていない。

 免許返納前の手段としてひとつ考えられるのは、自動車よりも運動性能を低下させた「超小型モビリティ」の購入だ。トヨタ車体の「コムス」やKG Motorsの「mibot」のように、最高時速を抑えた一人乗りミニカーであれば、乗用車の運転が難しくなってきた高齢ドライバーであっても無理なく扱えるかもしれない。

mibot 「mibot」KG Motors公式サイトより

 とはいえ購入にはそれなりの資金が必要だし、「高齢になってから新しい形の乗り物に適応できるか」という不安もある。事前に情報を集め、実際に試乗できる場を見つける際は、やはり家族などの協力が必須になるだろう。

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 ここまで見たように、最終的には免許返納を考えるにしても、まずは本人の生活環境や運転能力を鑑みながら、段階に応じて周囲が「生活環境の変化」をサポートしていくことが求められる。

 その際欠かせないのは、やはり「定期的に運転能力をチェックできる環境」である。後編では、加齢による事故率の変化などのデータを参照しながら、高齢ドライバーの運転能力を判断するための方法や、返納のタイミングについて考えていく。