高齢ドライバーによる事故のニュースを毎日のように目にしていると、「うちの親世代もそろそろ危ないのでは」と不安に駆られるものである。

 ただ、いずれは運転をやめてもらうにしても、悩ましいのが「返納のタイミング」や「話の切り出し方」だろう。本人としてはまだまだ運転できる気でいるのに、家族からいきなり返納の話を持ち出されては、プライドが傷ついてしまったり、あるいは必要以上に意固地になってしまったりすることも考えられる。

 ここでは前編に続いて「義両親の運転」に不安を抱く人の声を取り上げながら、「免許返納に向けてどう準備していくか」を考えていきたい。

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©mapoイメージマート

75歳で「1日500km」も運転する義父

 高齢の家族に免許返納を考えてもらうには、まず「以前よりも運転が危なくなってきている」という現状を本人に理解してもらう必要がある。

 しかし実際問題として、交通違反や事故などの現実的なトラブルがないと、運転能力について考えてもらうのも難しいところがある。この点に関して、群馬県に住む40代の竹下さん(仮名)は、熊本県在住の義父に対する複雑な心境を語ってくれた。

「75歳の義父はずっと自営で建設の仕事をしていて、昔からハイエースで現場を回っていました。しょっちゅう県外の仕事にも出ていたので、とても道に詳しく、運転にもかなり自信があるのだと思います。

 今でも大きめの車が好きで、日産のエルグランドに乗っていて。私たちが帰省したときには空港まで迎えにきますし、滞在中もとにかく全員で一緒に出かけたがるんですよね。

 どこへ行くにも絶対にナビは使わず、『この時間帯だとココ動かねぇんだよ』と、やたらと狭い道に入っていくのがお決まりのパターンです。

 ドライブ旅行も趣味で、この前も『1日で500km運転した』と自慢げでした。ただ乗せてもらうと、昔と比べて少しずつ動きがスローになってきているようにも感じます。

 私としては、正直そろそろ衰えを自覚して、今後のことを考えてほしいのですが、夫に相談しても『色々連れてってくれるしいいじゃん、お金も出してくれるし』と取り合ってくれません。

 義母も旅行を楽しんでいるようですし、車がない生活のことは考えられないと思います。今後も自分たちでは動こうとしないのだろうと思うと、不安で仕方ありません」