7万部突破の話題書『生成AIで世界はこう変わる』のAI研究者・今井翔太さんと、10万部超のベストセラー『世界一流エンジニアの思考法』の米マイクロソフトエンジニア・牛尾剛さんの初対談が実現。AI開発競争の裏側から、仕事での活用法まで存分に語り尽くした。
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松尾研でも「理解には本質的に時間がかかる」
今井 今日は対談にお招きいただき、大変光栄です。
牛尾 今井さんとぜひお話ししたいと思ったのも、『生成AIで世界はこう変わる』を読んで衝撃を受けたからなんです。専門家が書いたものすごく正確な本なのに、一般の人が読んでも非常に分かりやすい。僕はエンジニアとしてAIの開発にも参加しているので実感をこめて言えますが、いま押さえておくべきトレンドを綺麗にカバーしているし、開発の内側のテクニカルな話から松尾豊先生との対談における今後の見通しまで、完璧な一冊でした。周りにも、生成AIについて知りたかったら最初に読むべき本としてオススメしています。
今井 ありがとうございます。実は僕は最近までAI研究で有名な東大・松尾研の博士課程にいたんですが、研究室内の発言で「なにかを理解することは本質的に時間がかかるものなんだ」みたいな言葉を耳にしていたんですね。研究室にはすごい人たちが多いけれど、彼らは意外にミーティング中も、「ちょっと待ってください」と10秒くらい考えてから的確な発言をしていたりします。
これって何だろうなと思っていたら、たまたま手にとった牛尾さんの『世界一流エンジニアの思考法』に全く同じことが書かれていた(笑)。やっぱり一流の人は、本質的に考えたり理解するのに時間をかけているんだと感銘を受けました。幸運なことに僕は一流の方々とよく会話する機会があるのですが、彼らはその場限りの解決法を思いつきで発言せず、本質まで立ち返って、そこから100の事例にも1000の事例にも応用できることを考え抜いている。
本書ではそのあたりが明晰に言語化されていたし、変化の激しい時代に仕事でどう生き残っていけばよいのかというヒントがたくさん詰まっていて刺激的でした。
牛尾 とても嬉しい感想です。日本にいるときは理解の重要さが分かっていなかったんですよ。でもアメリカの本社にきて、僕がいるAzure Functionsというクラウド部門でも、AIのサービスをつくる部門でもゴリゴリの開発部隊が多いから、一流のエンジニアたちが徹底的に基礎的な「理解」に時間をかけているのを目の当たりにして、驚いたんです。ということで、今日は生成AIについて、しっかり理解したいと思っています。