気鋭のAI研究者・今井翔太さんと米マイクロソフト現役エンジニア・牛尾剛さんの白熱対談。前線で働く二人の生成AIの活用法とは?

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「学習に使われない」セキュアモード、信用していいんですか?

今井 牛尾さんは業務でAIツール使っています?

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牛尾 もちろん周りでもみんな使ってますよ。マイクロソフトが提携するOpenAIのサービスはもちろん、GitHub Copilotはスーパー便利だし、画像生成にはBingとか普通に使ってます。

今井 近年、生成AIのコーディングも各社いろんなサービスが出てますが、実際どうですか?

牛尾 無論ダメではないんですけど、やっぱりGitHub Copilotですね。開発には内部のデータを使うので、他のクラウドに秘匿情報を送るわけにはいかないですから。CopilotかBingのセキュアモードも使いますね。

今井 自社情報の取り扱いってみなさん気になっている部分だと思うんですけど、Azureにも上げた情報が「学習に使われない」セキュアモードがありますよね。あれ、信用していいんですか?

牛尾 大丈夫ですよ。僕らセキュリティに関してはかなり真剣に取り組んでいて、たとえばお客さんのミスで、ログデータのクレデンシャル(認証に必要な情報)が読める形になっていることがあっても、マイクロソフト側がデータを見たり取得したりできないような仕組みでガチガチに顧客情報を守っています。

今井 安心しました。研究者としての必要性から、生成AI関連の毎月の課金額は月に8万を超えていますが、僕の場合は頻繁に使うのはChatGPTと、Geminiが中心ですね。あと調べ物にはPerplexity。

牛尾 へー、Perplexityは調べ物にそんなにいいんですか。

今井 独自の検索インデックスを使っていて、論文のドキュメントから情報を拾ってくるので非常に便利です。ChatGPTがライト層用のまとめ記事とか素人のブログとか、一般的な検索サイトで上位ヒットするものを拾ってしまうのとは対照的で。お仕事以外でもChatGPTの最新モデル「o1」とか使ってます?

牛尾剛氏   撮影・松本輝一(文藝春秋)

「こなれた」英語表現もサジェスチョンしてくれる

牛尾 日常的に使っていますね。たとえば一番便利なのが言語系の処理で、普通の翻訳ツールより明らかにいいんです。コンテクストを調べるのにも最高で、僕はブルース好きなんですけど、普通にググっても出てこないマニアックなアーティストも、ざーっと整理して集めてくれます。ちなみに僕が、苦手意識を感じているのは英語なんですよ。

今井 アメリカでずっと仕事してきたのに?

牛尾 僕は留学経験もなく、40歳越えてから一生懸命英語を勉強してきたので、日本で「英語うまいですね」と言われても、ネイティブ感がまだまだです。周りと比べて英語を読むスピードも遅いし、例えばクラスやメソッドの名前を決めるとか、ログのメッセージを書くとか、意外と地味なところで「こなれてない」感じになりがち。そんなとき、「私はこういうコンセプトでこういうのを作ったんだけど、いい名前をサジェスチョンしてください」とAIに投げると、非常にいい感じのサジェスチョンをしてくれるんです。今井さんはどう活用してますか?