「まさにフジテレビだなと思った」

 ただ、大島監督はこの件を「まさにフジテレビだなと思った」という。あれだけ世論が割れた安倍氏の国葬に対して何の疑問もなくアナウンサーが司会をやっていることに驚いたと。当時フジ内部の人に聞いてみたらアナウンス室でも反発があったという。中立とか報道の客観性が保てるのかと。

「だけどやっぱり押し切られたんだということを聞いたんですよね。細かい話かもしれないがそれっておかしくね? と内部でちゃんと上がっていかないと、たぶんおかしくないと思っている人が多いんだと思う」

 さらに大島監督は語る。

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フジサンケイグループ代表の日枝久氏 ©文藝春秋

「日枝さんは安倍晋三さんとゴルフに行っていると散々報じられているわけです。はっきり言ってメディア機関のトップとしてはありえない行動なわけですよね。時の総理大臣とゴルフしてニコニコしているのがどういう風に見られるかがまったくわかっていないわけですよね。そういう会社でアナウンサーが国葬の司会をやっていると。こういうことがどう見られているか疑問を持ってほしい」 

「フジテレビ葬」の部分について「カットできないか?」と…

 私はこの部分を聞いて“そういえば”と思い出した。国葬の司会をフジテレビアナウンサーがやっていたことを忘れていたわけではない。大島監督の話につながるエピソードを思い出したのだ。ここからは自分の話になるが、昨年暮れにフジサンケイグループの扶桑社から『半信半疑のリテラシー』という新刊を出した。ここ数年の政治・社会・スポーツ・芸能に関するメディア論の本だ。 

 その中で安倍元首相の国葬の読み比べコラムを収録したところ、編集者から相談があった。国葬を東スポが「フジテレビ葬」と報じたと書いた部分について扶桑社の上から「カットできないか?」と言われたという。 

 当該コラムは「Numberweb」(2022年10月2日)に掲載したもので、

「面白かったのは『安倍元首相国葬は「フジテレビ葬」』という東スポ社会面の記事。国葬は、司会進行をフジテレビの現役社員である島田彩夏アナウンサーが務めたことで《政府主催イベントで、報道機関としての公平中立性から異論も出た》。起用は葬儀事務局側が過去の安倍氏との関係性などを考慮し、島田アナに指名があったという。フジは国葬を完全中継。《“フジテレビ葬”とも揶揄されるほどだった。》」 

 と私は書いていた。