くさの 公開し始めた時は読んでくださる方も多くなくて、元々のフォロワーさんからの応援や「驚いた」という反応をいただいていました。それがだんだんと多くの人に見てもらえるようになるにつれて、同じようにパートナーにひどい裏切りをされた方からの声が多く届くようになりました。

 中には私と同じく相手が依存症の方や、別の角度でさらにヘビーな事情を抱える方、既に離婚された方も今まさに発覚したてという方もいらっしゃいました。

 子供についてや家族としての付き合い方について、同じ悩みを持っている方がたくさんいると知って、励まし合い、時にアドバイスを受けながら描き続ける力をいただいています。

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読んでいて当時の動悸を思い出す

――そのようにSNSで公開されていた実体験が、あらいぴろよさんに新たに描きおろされる形で書籍化しました。ご自身の体験を客観的に読んでみて、いかがでしたか?

くさの 本を手に、これが私に起こったことなのか……と改めて信じられない思いで読みました。強烈なフィクションみたいですよね。

不倫がバレたあとの夫の“開き直り”は衝撃的

 自身で描いていた頃は、あまりのことにこれ以上傷つきすぎないよう怒りを全開にしていて、他の感情や自分を労る気持ちはゼロでした。少し時間が経って、冷静に起きたこととその時の思いを見つめ直すことができて。

 さらに、内省をマンガにしたら右に出るものがいないあらい先生のお力もあって、より丁寧でリアルなマンガになりました。何度も「あらい先生、あの時どこかから見てたの?」と思うところがあって驚きました。

――特にどのシーンが心に残りましたか?

くさの 発覚後に夫を問い詰めるシーンです。私の感情のジェットコースターっぷりと夫のとんちんかんっぷりが、追体験するようなテンポで描かれていて、読んでいて当時の動悸を思い出します。

漫画を担当したあらいぴろよさんが描く表情の迫力にも注目したい

 あと、夫が何を考えているかわからない表情が本当に本人そっくりでひとつひとつに腹が立ちます(笑)。

――すごく迫力のあるタッチですよね。表情に注目してもう一度読み返したくなりました。最後に、これからコミックを読む人に向けてメッセージをお願いします。

くさの 自分でも信じられないような話なので、読んでいる間は悩みから離れられるエンタメになっていてくれたらと思っていますが、特にいま渦中にいて決断ができない方、進んでいる方向が合っているのかわからない方に、ラストを読んでほしいです。

 この経験をSNSに投稿し始めたのは、夫の性依存症が発覚してから1年後、まだ過去はかさぶたにならず、未来も想像できないなかでのことでした。よく読む漫画の終わりはキレイでスカッとできるのに、現実はそうすっきりしない。キッパリ決めたり、パッと未来が明るく見えるわけでもない。もがきなら今できることを淡々とこなす自分のリアルを描いています。

 そんな等身大の姿を見て、エールになったり、「自分はこれでは嫌だ」と思ったりしていただけたらと思います。

次の記事に続く 真面目で奥手、性欲は薄め「こりゃ絶対浮気しないわ」と思っていたのに…結婚後にわかった“理想の夫”のウラの顔