「いつかなろう」と思っていたフリーランスの道が、突然開けたのは嬉しかったですね。そのために、少しずつでも準備をしてきてよかった。ただ、まだその時点では、「しばらく母を手伝って民宿が軌道に乗ったら、東京本土に戻ろう」と考えていました。
「東京本土に戻ろう」と考えていたが…青ヶ島で生活し続ける理由とは?
しかし、その直後に新型コロナウイルスが大流行。一時的に滞在するつもりだった青ヶ島から、出られなくなってしまった。正直その頃は、「エンタメがないこの島に長期間居続けるのは、退屈なんじゃないか……」と思っていました。
でも、いざ腰を据えてみたら、どんどん島暮らしが楽しくなっていったんです。今はネット環境が発達しているから、思っていたほど東京本土との情報格差を感じることもない。音楽も映画も、サブスクで気軽に楽しめるし、ゲームや漫画、服だって、Amazonを使えば数日で島に届けてくれます。
それに加えて、青ヶ島には東京本土では味わえないような出会いが溢れていたんです。本土では、居酒屋で隣り合わせになっても知らない人とは気軽に話さないですよね。
でも、青ヶ島は人口の少ない島だから、観光や仕事で来ている方はすぐに分かります。そして、みんな島唯一の小さな居酒屋に集まってくるから、「どこから来たんですか?」「どうして青ヶ島に来たんですか?」と自然と会話が弾むんです。
青ヶ島を通じていろんな人たちと交流を深めていくうちに、私の考えも少しずつ変わってきて。生まれ育った島だからもともと愛着はありましたが、大人になってじっくり島を見渡してみたら、ものすごい可能性に溢れた場所だな、と思うようになったんです。
昔に比べたら便利になったとはいえ、本土から青ヶ島に来るのは簡単ではありません。でも、1つの「自治体」として認められています。それに、「自分たちがこの島を良くするんだ!」と考えている力強い大人たちが、こんな小さな島にたくさん住んでいるんです。それは、青ヶ島が持つ唯一無二の魅力だと思います。
