「私の推薦人になって」

 だが、前原は単純な“野党共闘路線者”ではなかった。石破の盟友でもあった。同じ防衛族として考え方が近いだけでなく、鉄道ファンとしても長い交流があり、気心が知れた仲だ。昨年8月には揃って台湾を訪問している。その最中に当時の岸田文雄総理が、総裁選不出馬を表明。「心ここにあらず」となった石破を「かつてないチャンスだから頑張ってください」と激励した。対する石破はなぜか真顔で、「私の推薦人になってもらえませんか」と奇妙なお願いをしたという。

石破氏は前原氏とともに台湾を訪問した ©時事通信社

 そんな2人は昨年12月、マスコミが近づけない赤坂議員宿舎内の食堂で密かに会談した。臨時国会で最大懸案の補正予算案採決で維新が賛成に回ったことに石破が感謝を伝えると、前原は自ら苦学した経験から、教育無償化を実現することへの思いを語った。熱心に聞いていた石破は、学校給食無償化で、こんなアイデアを披露した。

「給食は地産地消で無償化できるといいですね。農水省の予算も充てられないかな」

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 一方、不満を溜めこんでいるのが、維新の中堅・若手議員たちだ。特に前執行部に近い議員たちが集まると、外様から共同代表に突如成り上がった前原への批判に花が咲く。

「教育無償化くらいで維新を自民党に売り飛ばすつもりか。本予算案の採決では勝手なことはさせないぞ」

※月刊文藝春秋の名物政治コラム「赤坂太郎」全文は、月刊文藝春秋のウェブメディア「文藝春秋PLUS」で公開中です。全文では、自民党中堅議員の「大連立構想」への受け止め、国民民主党・玉木雄一郎代表の強気の姿勢、石破首相をある「妖怪」に喩えての評価などについても語られています。

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