自民党と立憲民主党の「大連立政権」は可能なのか。永田町のインサイド情報を、月刊文藝春秋の名物政治コラム「赤坂太郎」から一部を紹介します。
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石破と野田のスレ違い
年が明けた1月6日、伊勢神宮参拝の後に行われた記者会見で石破は、大連立を視野に入れたアジェンダを掲げた。衆議院の選挙制度改革を検討する考えを示したのだ。
「より幅広い民意が反映されることが重要だ。約30年の現行制度の歴史を踏まえ、改めて党派を超えた検証が必要だ」
なぜ、まず選挙制度改革なのか。
「連立政権を組めば、同じ選挙区で競合する議員をどう調整するかが最大のネックになる。国民民主党や日本維新の会程度の規模なら、棲み分けも可能だが、148議席ある立憲との調整は無理。小選挙区制の見直しとセットにしていくしかない」(自民党幹部)
石破はまた、年末年始の間に野田と密会する機会を探っていた。信頼を寄せる元五輪担当相の遠藤利明に、こう相談を持ち掛けた。
「野田さんは極めて信頼できる友人だ。昔はよく酒も酌み交わした。今後のことを腹を割って話してみたい。遠藤さんに仲介を頼めないでしょうか」
ところが遠藤は、「自分は野田さんとそこまで関係が深いわけではない」と断った。非公式とはいえこのタイミングでトップ会談をセットするのは、責任が重大すぎると考えたのだろう。
石破が秋波を送る野田は、年明けに周囲にこう語っている。
「同じ赤坂議員宿舎に住んでいるんだから、会おうと思えば簡単に会えるんだけど、石破さんサイドからアプローチはまったくなかったよ」
石破が会いたがっているという情報は人づてに聞いていたが、肩透かしを食らった格好だ。そんな状況で迎えた1月4日。野田は記者会見で、大連立の可能性を明確に否定した。
「大連立はパンデミックとか大きな危機があったときに考えられる選択肢であって、平時には考えていません。政権交代のために野党の力を結集することに主眼を置いて、取り組んでいきたい」
7月の参議院選挙の前に大連立の匂いが漂えば、自民党との対決姿勢が弱まってしまう。立憲内には根強い反対派が多数いる。その急先鋒が党創設者にして元代表の枝野幸男だ。枝野は「大連立なんて話になったら、すぐに離党する」と周囲に宣言して憚らない。
野田の側近は、「大連立には絶対に乗らない」と言いつつ、こう明かす。
「ただ石破総理から期待を寄せられることは悪くない。維新や国民民主への牽制にもなるしね」
こうした中、立憲内に石破政権に協力してもいいとの雰囲気が醸成されつつある。ある幹部は「自民党が譲歩するなら、来年度予算案の採決で賛成してもいい」と話す。特に予算審議の鍵を握る衆議院予算委員長の安住淳は、参院選後の大連立に肯定的であり、予算案を人質に石破政権を追い詰めようという気配はない。
とはいえ、本予算案の採決で立憲の賛成を得るのは、まだまだハードルが高い。そこで、石破が最も期待を寄せるのが維新だ。昨年12月に新代表に選ばれた吉村洋文は、国会対応を任せる共同代表に元外相の前原誠司を選んだ。前原は、昨年の総選挙直前に維新に合流したばかりの「外様」。この人事について維新関係者はこう明かす。
「前原は“野党共闘路線”で吉村と近いこともあるが、何といっても橋下徹(元代表)さんと良好な関係を保っていることが大きい。馬場伸幸代表当時、橋下さんの執行部批判にはみんなが手を焼いていたから」