まるで妊娠したことが罪であるかのように仕事をやめさせられ、日本から追い出される数多くのベトナム人女性たちがいる。ここでは『妊娠したら、さようなら――女性差別大国ニッポンで苦しむ技能実習生たち』より一部抜粋し、日本人男性との交際の末、妊娠した一人のベトナム人女性をご紹介する。(全2回の前編/後編を読む)

写真はイメージ ©beauty_boxイメージマート

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アルバイトを掛け持ちしても、経済的に苦しかった

 留学生の本分は勉強なので、アルバイトをするためには入管で「資格外活動許可」というものを取る必要がある。なおかつ勉強とアルバイトの比重が逆転して、働くことが滞在のメインになってしまわないよう、入管の本音をいえば、就労目的で留学生の在留資格を取る人が出てこないよう、アルバイトには時間制限も設けられている。

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 具体的には、学校があるときは週28時間、夏休みや冬休みなどの休業中は1日8時間、週40時間となっていて、残業もその時間に含まれる。

 ホアさんも当然このルールに則って、お好み焼き屋やホテルの清掃のアルバイトを掛け持ちして、学校に通っていた。経済的に苦しいことを知ってか知らずか、日本人男性のXはホテルでセックスすると、小遣いを渡した。金額は1万円のときもあれば、2万円のときもあった。

 

 2020年3月、ホアさんは1年間通った日本語学校を卒業する。その後は日本で専門学校への進学を希望していたのだが、新型コロナウイルスが急速に感染拡大して、進学は頓挫し、アルバイトもできなくなってしまう。宙ぶらりんの状態になった彼女は、コロナ禍における特例措置として、帰国困難者や雇い止めされた外国人を対象に出された「特定活動」という在留資格を取得する。派遣会社に登録して、ファストファッションブランドで衣類の発送業務に携わるほか、弁当屋などでもアルバイトをしながら、東京での生活を続けていた。