仕事を辞め貯金が20万円に。簡単な仕事で稼げると誘われ……。高額な報酬を目当てに海外へ出稼ぎ売春をする女性たちがいる。いったい彼女たちはどのような思いで日々を過ごしているのか。
ここでは、週刊SPA!編集部 国際犯罪取材班による『海外売春 ――女たちの選択――』(扶桑社新書)の一部を抜粋。マカオで身体を売る女性サクラのエピソードを紹介する。(全3回の1回目/続きを読む)
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娼婦の自覚
サクラは記者の取材に、この日初めてメイクされたときのことが忘れられない、と振り返っている。海外で娼婦になったのだという現実をこのとき初めて受け入れたという。逆に言えば、このときまで現実になにが起きるのか理解していなかった。サクラは女を買いにくる外国人、とくに中国人に受け入れられなければならなかったのだ。つまり――中国人が最も好むメイクを施されていたのだ。
「ショックというか、鏡を見ながら私はここまで堕ちたんだなって思いました。これから性を売り物にするというのは覚悟してその場にいたはずなんですけど、やっぱり本当のところの覚悟はできていなかったのだと思います」
短い研修を経て、その日からショータイムに参加することになった。研修といっても、ショータイムで壇上にあがり、客に選ばれたら、ベッドがひとつ置いてある個室に行き、避妊具をつけてセックスをするという流れを説明されただけだった。そして男からは片言の日本語でこんなことを言われた。
「あなたはこのお店ではサクラです。日本といえば桜でしょ。この店でサクラはいつも日本のナンバーワン」
かくして何代目かわからない「サクラ」を襲名したのだ。
研修のなかで、「早く終わった場合、時間いっぱい男の相手をせず部屋から出ても問題ない」と言われたのが救いだった。個室に入ったら挨拶や世間話などをしなくてもいいということだった。そもそも彼女は中国語を理解しないが、男のほうもそのような触れ合いは求めていないのだと説明された。
「ガンバって早くイカせちゃいましょう!」
日本語を少し話す黒服はこう冗談を言って笑ったが、サクラはまったく笑う気が起きなかった。
