建物一棟全120室を1250口に分割して販売

 しかし建前上は、その共有持分登記は会員の入会金などの担保になるものなので、他のリゾート会員施設では各居室にそれぞれ10~20人単位で共有持分登記を行うのが一般的だ。

 苗場、岩原で新築された2施設についても、苗場は全32室を320口、岩原は全120室を1250口に分割して共有持分登記が行われている。ちなみに第一次会員の販売価格は一口303万円である。

エクストラクラブ岩原の現在の様子。閉業後もしばらくは管理者が常駐していたが、今はその姿もなく放置されている

 建物1棟全体を会員全員の名義で共有する手法は、エクストラクラブに限った話ではないだが、1200人を超える見ず知らずの赤の他人と共有している、自分がどの部屋の権利を有しているかも明確ではない状態の「所有権」に、果たして数百万円の担保価値があると言えるのか。

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 もちろんそれは、結果を知っている今だからこそ言える話なのかもしれないが、このエクストラクラブの新築時点で、不動産共有型のリゾート会員権には同様の懸念が持たれていたのも事実なのだ。

 会員権購入者からの批判の高まりを受けて通産省がリゾートクラブ業界の実態に関する報告書を公開したのは、エクストラクラブ湯沢の開業からわずか9か月後のことである。

 同社のパンフレットでは「元金は不動産として保証されます」などと断定しているが、多くの施設において、その謳い文句通りになっていなかったからこそ、運営会社と会員の間で紛争が頻発していたのだ。

エクストラクラブ岩原のパンフレット。「元金は不動産として保証されます」との文言があるが、この当時すでにリゾートクラブ業界の問題点についての通産省の報告書が公表されていた

 前述の東京弁護士会のパンフレットにおいても、セールスの謳い文句通りの売却価格が一切保証されていない事例が数多く掲載されている。

管理費や修繕積立金を20年以上払わなかった運営会社

 また協和観業は、およそ企業としての責任感も持ちあわせていない会社であった。

 前述のように「エクストラクラブ湯沢」は、一般の分譲リゾートマンションであるライオンズマンション越後湯沢の9階のワンフロアを丸ごと自社の会員施設として運用しており、全13室中12室は自社名義で区分所有権を取得・所有していた。当然区分所有者としてマンションの管理費や修繕積立金を支払う義務があった。

 ところが同社が管理費等を支払っていたのは新築からおよそ半年間ほどの期間だけである。施設の運営は、管理費を滞納しながら継続していた。おそらく最初からまともに費用を支払う気などなかったのだろう。

 あきれたことにその後同社は20年以上にわたって管理費を滞納し続けた。