最終的にその滞納額は億単位に膨れ上がり、2019年、地元の管理会社が競売を申し立て、協和観業、および901号室にまだ残されていた会員の共有持分を差し押さえた。その後改装が施され、現在ライオンズマンション越後湯沢の9階部分は、地元企業が運営する民泊施設として運用されている。

会員の承諾を得ずに一般宿泊客を受け入れ

 最後に完成したエクストラクラブ岩原は、1~3階部分に喫茶店やボウリング場、テニスコートなどの共有設備を備えており(商業施設の区分は協和観業が単独で所有)、会員用の施設としてだけではなく、一般の宿泊施設(ホテルエクストラ)として宿泊客の受け入れも行っていた。

 しかしこれも信じがたい話であるが、同社が区分所有権の販促用に発行していたパンフレットのどこを見ても、一般客を受け入れる宿泊施設として運用するなどという記載はない。それどころか広告内には「限定オーナー制」との文言があり、あたかもオーナーしか利用できないかのような(というより、そうとしか読み取ることができない)記載がある。

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 会員制リゾートとして運用する一方、一般の宿泊客も別料金で受け入れている施設はあるが(例えば東急ハーヴェストクラブの一部施設も非会員の利用が可能)、共有持分であれ当然部屋の所有者の承諾が必要になるものであるし、クラブによっては部屋の権利を有する会員に対し、ホテルの収益の一部を分配するところもある。

 協和観業はそうした会員へのリターンを行った形跡もなく、そもそもホテルとしての運用自体、会員すべての承諾を得て行われていたものですらなく、あまつさえ、より高額の宿泊料を取れる(会員向けの割引価格が適用されない)一般客の予約を優先するあまり、会員の方が逆に予約を断られるという本末転倒の有様だった。

虚偽だった「未利用宿泊券買上げシステム」

 エクストラクラブの会員には、年間に、夏季利用券と冬季利用券がそれぞれ10枚ずつ、つまり年20泊分の宿泊券が送付されていたが、協和観業はこの宿泊券の未利用分について、1枚8500~1万円で買い上げるので、エクストラクラブの会員権は「財テク」としても有効であると謳われていた。

 パンフレットにはご丁寧にも、利用券買い上げシステムの財源確保の手段まで記載しているが、それを読む限り会員が宿泊時に支払う施設利用料(ルームチャージ1室3000円、一人1泊1000円)を、未利用宿泊券の買い上げ資金に充当するという。

パンフレットには「利用券買上げシステム」の概要が記載されている。「財テク派にもうれしい」などとあるが、実際には買上げは一切行われなかった

 本来、施設の維持管理に充てられるべきルームチャージを、換金性の低い宿泊券(運営会社自身が引き取るのならなおのこと換金性がない)の買い上げに回していたら、施設の維持管理費用はどこから捻出するのか。