電気、水道といった施設の利用に必要なインフラが止められ、他者の権利に阻まれて解体もできなければ売却もかなわない……。「負動産」状態になってしまっているリゾートマンションや会員制リゾートがいまや少なくない。

 はたして、一世を風靡した数々の物件はなぜ無用の長物になってしまったのか。ここでは、不動産の調査を続けるライターの吉川祐介氏による『バブルリゾートの現在地 区分所有という迷宮』(角川新書)の一部を抜粋し、1250もの区分所有権を売り出していたエクストラクラブ岩原について紹介する。(全2回の1回目/続きを読む)

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ある会員制リゾートクラブの会員権の販売手法

 新潟県長岡市に本社を置き、いわゆるラブホテルなどの経営を行っていた「協和観業株式会社」が、1980年代半ば頃から新潟県湯沢町において運営していた会員制リゾートクラブが「エクストラクラブ」だった。現役時は3か所の施設を運営していたが、すべて湯沢町内に存在していた。

 1号店となる「エクストラクラブ湯沢」は、独立した施設ではなく、85年10月に新築された「ライオンズマンション越後湯沢」の9階のワンフロアをすべて協和観業が取得し、200口に分割した共有持分として販売することでクラブの運営を行っていた。

 その後86年、苗場エリアにあった三国小学校浅貝(あさかい)分校(閉校)の隣に5階建ての専用施設「エクストラクラブ苗場」をオープン。

エクストラクラブ苗場。建物裏はガラスが破損している箇所もある

 そして同社の真打ちの施設となる、地下1階地上14階建ての「エクストラクラブ岩原(いわっぱら)」が88年に完成し、それぞれの施設の会員(共有持分者)が、相互にその3施設を利用できるシステムだった。

 同じ町内に三か所もの施設を構えたのは、前章で解説した通り、当時の湯沢町は苗場を中心に大変なスキーブームで、恒常的に宿泊施設が不足していたからであろう。

 協和観業が進出した時点で、すでに湯沢町内にはいくつかの会員制リゾートが存在していたが、マンションの建設ラッシュが続く湯沢町において、マンションの1室を購入できるほどの資金力を持たない層をターゲットに事業を拡大していたことは間違いない。

 協和観業は、会員権の販売手法も、また運営もトラブル続きの問題企業であった。そもそも1店目である「エクストラクラブ湯沢」が置かれたライオンズマンション越後湯沢の9階は13室あるのだが、各部屋はそれぞれ区分所有登記が行われておらず、協和観業は9階部分のワンフロアを丸ごとを200口に分割して販売していた。

 会員制リゾートの会員は、自分が共有持分を所有している部屋しか使用できないわけではなく、予約時の状況に応じて施設のいずれかの部屋が割り振られる。

 そのため、ワンフロアを200口に分割して登記していたとしても、施設の運営に直ちに影響が出るわけではなく、問題は表面化しないかもしれない。