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case4・郵便受けに入っていたものとは……

 一方、犯罪者は、入居者の中にいることもある。

 あるアパートで「ネットで購入した商品が、配達記録はあるのに郵便受けにない」という相談が入居者から管理会社にあった。管理会社は入居者に不審者を見ていないかをきいてみると、70代女性入居者の不審な行動が目撃されていたことがわかった。他の入居者から詳しく話を聞くと、白昼堂々、他人のポストの中を覗いていたという。この女性、玄関ドアには魔除けのような飾りをつけるなど周りから変わった人という印象を持たれていた。

 さらに驚く事件が起きたのは、郵便物の騒ぎから数カ月後。あろうことか郵便受けに無作為に排泄物が入れられ、郵便受けの下にもばらまかれていたのだ。すぐに監視カメラを設置。マークしていた女性入居者にもそのことを告げた。ところが、数日後、同様の手口で郵便受けに排泄物が入れられていた。すぐに監視カメラのデータを警察に被害を届け確認すると、そこには女性入居者が夜排泄物をばらまく姿が映っていた。女性入居者宅を捜索すると冒頭の他の入居者の郵便受けに入っていたはずの宅配された商品が出てきた。

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「おそらく周りの反応を見て楽しむ愉快犯だったのでしょう。郵便物がなくなり大騒ぎになって、排泄物をばらまくなど行動がエスカレートしたのだと思います。今は管理会社の巡回を強化してもらい、会った入居者に異変はないか確認してもらっています」と家主は話した。

case5・契約から1週間で入居者が自殺

「入居者さんがどうやら練炭自殺を図ったようです。他の部屋の方も一酸化炭素中毒になる可能性があり、至急他室の入居者さんの安否確認をしたいので、鍵を持って来てくれませんか」。名古屋に賃貸住宅を所有する家主の元に警察から連絡が来たのは、正月ムードも抜け切らないある年の1月4日だった。東京に住んでいた家主は鍵の管理を任せていた管理会社に対応してもらった。

 警察からの電話を切った後、家主の頭の中に大きな疑問が渦を巻いていた。警察から問い合わせのあった部屋は、空室のはずだったからだ。自殺現場の検証も終わり、管理会社に自殺した人は誰だったのかを確認した。すると、元々近隣に住んでいたのだが、年末に「今すぐこの部屋に引っ越ししたい」ということで契約。審査も通ったので契約も完了したのだが、年末の忙しい時期だったということもあり、家主への連絡が遅れたのだという。練炭自殺は、引っ越ししてから1週間も経たない間に発生してしまった。

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 入居者が部屋の中で自殺すると事故物件扱いになる。家賃は5万4000円から 6割減の 3万円に引き下げることとなった。現在は事故物件であることに動じない女性が入居し、徐々に家賃も戻すことができている。

「こうしたことを未然に防ぐことは難しいですが、例えば、急な転居などは用心したほうがいい。死に場所を探しているかもしれないからです」と家主は話す。

家主業も楽じゃない

月刊 家主と地主 5月号

 今回紹介したトラブルはほんの一部で、他にも家賃滞納された挙句夜逃げ、迷惑行為をする入居者、入居者自身が犯罪者だったということはよく耳にする話だ。「不労所得」と言われる家主だが、事件やトラブルに巻き込まれるリスクがある家主業は意外にも「苦労所得」なのかもしれない。