「原因はなんです? 重量が3キロ減った原因は」

「コックピット周辺のフレームの材質を変えたんです。強度は上がっていますから、絶対危険じゃありません」

「当たり前でしょ、弱くなったらたまらないわ。なんで事前に通知して」

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「納期を10日も繰り上げられれば……」

「それはネオ・ジオンのシャアに言ってください。あの人がこんなに早く隕石落としをしなければ、こんなことにはならなかったわ」

 観客は、このやりとりを聞いたとき、カメラに導かれるまま工場に入り込み、そこで偶然二人の会話を耳にしたように感じるだろう。こうして台詞によっても観客は「進行中の状況」の中へと導かれていく。

 ただこの台詞は「途中から聞こえてきた会話」のようでありながら、「ネオ・ジオンのシャアが軍事行動を起こした」というこの映画の大前提を明確に盛り込んでいる。アバンタイトル(メインタイトルが出るまでの導入部分)では、そこが伝われば十分といえる。

とにかく「無駄がない」演出

 また覚えていなくてもストーリーの展開に影響はないが、後に明らかになるとおり「コックピット周辺のフレームの材質を変えた」ということも、ちゃんと物語上意味のある台詞となっており、無駄がない。

 このように先行する音楽、ゆるやかなカメラワーク、途中から聞こえてきたかのような会話の積み重ねによって、観客はいつの間にか「進行中の状況」=ネオ・ジオン軍と連邦軍の戦争状況へと導かれていくのである。

 会話の区切りがつくと、女性の軍人――チェーン・アギ――は、建造中のモビルスーツ(ロボット)にかけられたシートを取り去る。そこに現れる巨大なモビルスーツ、νガンダムの顔。

(画像:サンライズ公式サイトより)

 そこに本作のタイトルがかぶさり、音楽が高らかに鳴る。このカットで「本作はロボットアニメである」とそのジャンル性を宣言して、映画は本格的に始まることになる。

 アバンタイトルで本作が地球とその近傍の宇宙空間を舞台にした、ロボットアニメ、戦争アニメであるということをコンパクトに印象付けると、舞台は地球に移る。ここからが実質的な本編の始まりである。

その他の写真はこちらよりぜひご覧ください。