年金月5万円で、どうやって「おしゃれな生活」を…？ 賀来千香子の「なんかイイかも」と思わせるパワー――青木るえか「テレビ健康診断」

　ていねいな暮らし、というものがある。

　自分のささやかなこだわりが大切。小さな幸せを追求したい。新築よりもリノベーション、梅干しを漬け、服は木綿か麻、ちくちく針仕事。思想はリベラル。たぶん反原発。そういうお姉さんやおばさんがいる。

「ていねいな暮らし」の人が好むテレビ番組はNHKでやってた『団地のふたり』だ。昭和の団地でシンプルに暮らしてる50代の女ふたりが小林聡美と小泉今日子、というだけでもうおなかいっぱいになりそうなドラマだった。けど評価高かったなあ。「ていねいな暮らし」の人がこぞって見てたんだろうなあ。

　NHKはドラマだけではなく「ていねいな暮らし」の人々に向けて番組をつくっている。Eテレの『あしたも晴れ！人生レシピ』。

　50を過ぎた、たぶん女性向けの、中高年の生き方暮らし方を紹介するような番組なんですけど。

　ちょうど「うるおいある暮らしを送る70代の女性」がお二方、紹介されていた。年金月5万円とかで暮らしているのに、うちなんかよりずっと小ぎれいでおしゃれな生活なんですよ！

「どうやってそんな生活を!?」というのがくわしく紹介されるんですが、古い服をリメイク（オシャレ）したり、古いタンスをバラして飾り台（オシャレ）として再利用するとか、そこにアート作品（オシャレ）をさりげなく飾るとか、なさっている。

　すごいなあと思うのと同時に、なんかこれムリ……という思いも、今、自分が座ってる部屋の四隅に積もっている綿ぼこりを見ていると湧いてくる。そしてその、アート作品飾っている人は美術館や画廊に勤めてたとか、オシャレリメイクの人はフリー編集者だとか言われて「なんか、やっぱりムリだよ！　オレみたいな下世話な人間にはムリ！」とテレビのリモコン投げつけたくなった、……んだが。

　司会というか聞き手が賀来千香子で、賀来さんがほんと目を輝かせて、心の底から「わぁー、すごいです、すてきです……！」って話を聞くんですよ。

　絵空事みたいな（すいません、私にとって、です）ていねいな暮らしを、テキトーに愛想のいい相槌なんかで聞かれたらものすごく見ていてゲンナリすると思うんだけど、賀来千香子のお目々キラキラの聞きっぷりは、反ていねい派の私の頭すらぼーっと酔わせて、「これ、なんかイイのかも」と思わせる。それぐらいの力がある。賀来さんは別にそれを演技でやってるとも思えないし（それほど演技が巧みなタイプではない人だし）、ほんとに心からキラキラなの……。

　素晴らしい司会だと思う。けどこの番組じゃないと活きないかもしれない。賀来さん見るためにこの番組を見続けたい。