この規模であれば一番気持ち良い

――監督自身はまだこれからもインディペンデント監督として撮っていきたいと思ってますか?

ウィリアムズ監督 僕自身は、大きな予算をかけずに今後もやっていきたいと思っています。やっぱりこの規模であれば一番気持ち良いというか、自由度が高い。クルーの生活もきちんと保証されるけれども、自由がある。もちろん、アメリカでも本当にこうした映画の配給なり、上映の場がもっとあればと思うんです。実はこの映画はフランスの方が、アメリカ全土よりも観た人が多い。上映する劇場数もフランスの方が多かった。こういう状況を考えると、もうアメリカでは中、低予算の独立映画は持続不可能だというのが実態です。

 

劇場も配給も誰も得しないシステム

――アメリカの配給会社がこうした映画をあまり取り扱わなくなってしまったのは、上映する劇場がないからなんでしょうか?

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ウィリアムズ監督 実はスクリーン数自体は、かなりあるんですよ。ただ大手スタジオ作品を優先的にかけているので、インディーズ作品があまり入り込めない。でもスタジオは劇場を押さえているくせに、配信も同時にしているから、物理的に映画館には誰も足を運ばない、という悪循環になってしまうんです。例えばニューヨークのIFC CENTER(インディペンデント・フィルム・センター。アート系作品を多く上映)に本作がかかった時、同時に大手スタジオの作品もかかっていて、そちらは結局誰も客席にいないという結果になってしまった。大手は配信しつつも、宣伝のためにスクリーンを押さえているだけ。これでは劇場も配給も誰も得しないですよね。

 

 ただアメリカには本当に奇特な金持ちがいっぱいいて、僕らのような映画に投資をしたいという人がいるんです。映画が好きでとにかく関わりたいクレイジー・リッチな人は、お金を出すだけで回収を念頭に置いてないんですよ。僕のこの映画にも投資してくれた人がいて、もうそれは本当に有難いことでした。ただ、できれば僕だって利益を出して、投資した人にお金を返したいし、そうあるべきだと考えます。そしてその利益から次の作品を作るっていうのが、本来のアメリカ的な映画製作のあり方だと僕は考えているんです。これが例えばヨーロッパだと、公的資金や助成金が充実していて、回収とか返済っていうのがある意味不要で作り続けられる。けれども、アメリカはそういうシステムじゃないですよね。