手練れの業界ウォッチャーが、新聞報道にもの申す! ここでは『文藝春秋』2025年5月号より、人気連載「新聞エンマ帖」の一部を紹介します。
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米騒動報道に現場感ナシ
昨夏から続く「令和の米騒動」が新局面を迎えた。
コメの店頭価格が前年より7割もアップ。国民の堪忍袋の緒が切れるのを恐れた政府が価格を下げるべく、政府備蓄米の放出ルールを変更。2月14日、21万トンの放出を3月中旬から実施すると発表したのだ。
24年産米の収穫量が前年より18万トン多いのにJA全農など大手業者の集荷量は24年末時点で21万トン少なかった。政府は、一部の業者や農家が値上がりを見込んで在庫を抱え込んだため、価格高騰が起きたと分析。江藤拓農水相は会見で「マネーゲームの対象になってしまう」と危機感を吐露した。
これに対し、13日の毎日社説「対症療法で食を守れるか」は「(農水省は)JA全農など大手の在庫しか調査しておらず、(米価高騰の)原因を把握しきれていない」としつつ「投機的な動きが原因で米価がつり上げられているなら、政府の介入も必要になる」。15日朝日社説「『高値』の背景 点検を」も同様に留保つきで「一時的に市場への供給を増やすのは理解できる」と放出に一定の評価を与えた。
その一方、生産農家や流通業者らの間では、農水省の放出を「むしろ遅すぎ」と受け止め、理由の説明についても「コメ行政の失敗の責任を転嫁するもの」との批判も根強い。
その農政批判の急先鋒が、中日、北海道など地方紙やテレビで「米価を下げる効果はない」と論陣を張った元農水官僚でキヤノングローバル戦略研究所研究主幹の山下一仁氏。
18日配信のプレジデントオンライン「『消えたコメ』を探しても絶対に見つからない…『コメの値段は必ず下がる』と言い続けた農水省の“壮大なウソ”」では、「24年産米を端境期の8〜9月にかけて先食いしたため、(略)民間在庫は対前年同月比で40万トン程度少なくなっている。消えたのではなくコメがないから、集荷競争が激化し農協の集荷量が減っている」とし、「農水省の幹部や同省の言うままに記事を書いた記者は、今頃不安にさいなまれているのでは」と皮肉った。
※本記事の全文(約3500文字)は「文藝春秋」2025年4月号と「文藝春秋PLUS」に掲載されています(新聞エンマ帖)。全文では下記の内容をお読みいただけます。
★ホンダ日産破談、日経の不誠実
新聞業界には「我が社もの」という言い方がある。朝日なら「夏の甲子園」報道、読売なら巨人軍報道のように…
★石破・麻生会談の裏読み
そう言えば、旧知の老政治記者が言っていた。政局を知るには、政治面の隅っこにあるベタ記事を読むに限る。記者の余計な臆測が…

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2025年4月号
2025年3月9日 発売
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