直木賞作家・朱川湊人さんの最新作『花のたましい』が、かつてない小説の試みとして注目を集めている。
『花のたましい』は4月25日に全国公開される映画『花まんま』(原作は朱川湊人さんの同名小説)のスピンオフ小説集で、映画の登場人物たちの「もうひとつの物語」が描かれる。
主人公の俊樹(鈴木亮平)、妹のフミ子(有村架純)、フミ子の婚約者の太郎(鈴鹿央士)、俊樹の勤める工場の社長(オール巨人)、行きつけのお好み焼き屋の大将(オール阪神)、その娘の駒子(ファーストサマーウイカ)などなど、個性豊かな映画の登場人物たちが、小説の世界によみがえるのだ。
なかでも作家に大きく影響を与えたのが、駒子を演じるファーストサマーウイカさんだった。撮影現場を見学した朱川さんが、ウイカさんのハマりっぷりに驚き、執筆を決意したのだという。
「駒子は僕の原作には出てこない、映画のオリジナルキャラなんです。自分が産み出した人物ではないので、どんなものかと思っていたら、あまりにも自然に物語に溶け込んで、しかも重要な役割を果たしていたので、こりゃまいったな、と(笑)。あとは、もともと頭にあった小説の構想に駒子を落とし込むと、勝手にストーリーが動き始めました」
ウイカさんは『花のたましい』を読んだ感想をこう語る。
「作品の冒頭、お初天神にお参りするシーンで、駒子がお賽銭を数回分、前払いするんです。『うわ、やりそー』と、いきなり笑ってしまって。ほかにも、頼まれたらいやといえないところ、おせっかいなところ、世渡りが上手なところ。演じた身として悔しいほどに(笑)、駒子らしさが細かいところまで随所に描かれていて、生き生きとしていました。駒子になついてしまう幼馴染の女の子も『いるなー、こういう子』という感じの、身近な誰かを当てはめてみたくなるような女の子。朱川先生の産み出すキャラには、常にそういう説得力があるように思います。わたしの芝居が執筆の契機になったのだとしたら、役者として、なによりうれしいことです……」