残された者が生きていくためには……

 ウイカさんの役作りが、そのまま小説の主人公の造型に生かされたわけだが、どんなことを意識して芝居にのぞんだのか。

「原作の小説『花まんま』は、俊樹とフミ子の幼少期が描かれています。一方の映画は、主に2人が大人になってからのお話。その時間の隙間を埋めるのが自分の仕事やと思って取り組みました。不器用な兄ちゃんと、心やさしい妹が懸命に生きていて、2人はいつも誰かに支えられている。その支える側をわかりやすく可視化したのが、駒子です。観客のピントが合いやすい人物だと思います。わたしが撮影に入ったときには、もう亮平さんと有村さんが“大阪下町に生きる人々の空気感”を作ってくれていたので、自然にそれに身をゆだねるような気持ちで、役柄と自分とのオン・オフも、あまり意識しないようにしました」

ⓒ2025「花まんま」製作委員会

「『花まんま』も『花のたましい』も、不思議なことが起こるお話なのに、なぜか『わかるわー』と言わされてしまうリアリティがあります。普段は現実にはありえないと思っていることも『いや、あるかもしれない』と、どこか信じられる。たとえば、結婚式なんかで『死んだおじいちゃんも、よろこんどるやろな』『うん、今日はここへ来とるかもしれんで』みたいな、身近にある『もしも』の話のように。残された者が生きていく上で、ファンタジーは救いになるし、必要なものなんだなってこの作品で改めて思いました。

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『花まんま』がどういう映画なのか、『花のたましい』がどういう小説なのか、ひと言で言い表すのはむずかしいので、ぜひみなさんの目で、たしかめてください」

ⓒ2025「花まんま」製作委員会

 小説『花のたましい』は2025年3月24日(月)発売、映画『花まんま』は4月25日(金)公開予定。映画原作『花まんま』(文春文庫)も好評発売中です。


《映画『花まんま』作品情報》
■タイトル:『花まんま』
■公開情報:2025年4月25日(金) 全国公開
■キャスト:鈴木亮平 有村架純
      鈴鹿央士 ファーストサマーウイカ 安藤玉恵 オール阪神 オール巨人
      板橋駿谷 田村塁希 小野美音 南 琴奈 馬場園 梓
      六角精児 キムラ緑子 酒向 芳
■原作:朱川湊人『花まんま』(文春文庫) ✿第133回直木賞受賞
■企画協力:文藝春秋
■監督:前田 哲(『こんな夜更けにバナナかよ 愛しき実話』『そして、バトンは渡された』『九十歳。何がめでたい』ほか)
■脚本:北 敬太
■イメージソング:AI「my wish」(UNIVERSAL MUSIC / EMI Records)
■映画コピーライト:ⓒ2025「花まんま」製作委員会

花のたましい

花のたましい

朱川 湊人

文藝春秋

2025年3月24日 発売

花まんま (文春文庫 し 43-2)

花まんま (文春文庫 し 43-2)

朱川 湊人

文藝春秋

2008年4月10日 発売