「お姉さんひま?」「待った?」

 新宿の歌舞伎町を歩いていると、男性からよく声をかけられる。しかし、その「お姉さん」の正体は51歳の男性だ。自らを「無加工女装おじさん」と呼び、SNSで女装やメイクについて発信しているりんりんさんは、そんな経験を笑いながら語る。

女装家のりんりんさん(51) ©深野未季/文藝春秋

「すれ違った男性が、ボクの顔や容姿を一度確認してからくるっと回って後ろからついてくるんです。10メートルくらいついて来たところで『男だけど』と言い放ちます。そうすれば、だいたい撃退できますね」

ADVERTISEMENT

43歳で初めて女装して、46歳頃から本格的にハマった

 りんりんさんが初めて女装したのは43歳のとき。当初はバンド活動の一環としてコスプレをしていたが、次第に女装の面白さに目覚めていった。本格的に女装を始めたのは46歳のころで、プロにメイクしてもらったことがきっかけだった。

「プロってすごい!」と感動し、自分でもメイクを学び始めたという。現在では、TikTokのフォロワー数が4万6000人を超える人気者となっている。

 女装をする上で最もこだわっているのは、いかに男らしさを消すかだ。りんりんさんは「綺麗系よりかわいい系に見られたい」と語る。

「ボクつり目なので、メイクではできるだけ"たれ目"っぽくして柔らかい印象にしたり、ハイライトとシェーディングを使って鼻を丸く小さく見せたり。とにかく、可愛い顔に見えるよう工夫してます」

 

「知ってる人が誰もいない」SNSで「無加工」にこだわるワケ

 女装を始めてからは、スキンケアにも力を入れるようになった。化粧水や乳液を使い始めてからは、肌質が大きく改善したという。

「最初の頃はもっとごわごわで、毛穴も今より大きかったけど、最近は自分でもわかるくらい肌が柔らかい。ファンデを買いに行ったとき、化粧品売り場のお姉さんにも驚かれました」

 りんりんさんは、SNSでの発信にあたって「無加工」にこだわっている。以前は加工アプリを使用していたが、ある出来事をきっかけに方針を変えた。

「女装バーへ行ったら『知ってる人が誰もいないな』と思ったことがあったんです。でも、実際に話してみるとSNSで見たことのある人ばかり。SNSでは加工で別人になってるから、気付かなかったんですよね」

 この経験から、りんりんさんは加工をやめ、メイクの技術向上に励んだそうだ。

 りんりんさんの活動は、多くの人々に影響を与えている。「自由にやってるのがすごい素敵です」「おじさんなのにこんなに可愛くなれるんだったら、私もメイクや美容を頑張ろうと思いました」といったコメントが寄せられるという。

 彼の姿は、年齢や性別に関係なく自分らしく生きることの素晴らしさを教えてくれる。

◆◆◆

 このインタビューの全文は、以下のリンクからお読みいただけます。

次のページ 写真ページはこちら