自らを「無加工女装おじさん」と呼び、SNSでメイクや女装について発信している女装家のりんりんさん(51)。主に女性層から支持を集め、TikTokフォロワー数は4万6000人を誇る。

 もともと女装に興味がなかったりんりんさんは、どのようにして女装にハマっていったのか。周囲の人はりんりんさんの女装に対して、どんな反応を示しているのか。話を聞いた。(全2回の1回目/2回目に続く)

女装家のりんりんさん(51) ©深野未季/文藝春秋

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「あれ、女の子だよね?」43歳のときに初めて女装

――まずは、女装を始めたきっかけを教えてください。

りんりんさん(以下、りんりん) 最初に女装をしたのは、43歳のときです。当時アマチュアでバンドをやっていて、ボクはキーボード担当でした。ある日のライブでアニソンを演奏することになり、みんなでコスプレをすることになって。

 ボクはキーボードで立ち位置的には後ろのほうだし、そのバンドは10人くらいの大所帯だったから、普通にしていたらあまり目立たない。だから、エヴァ(新世紀エヴァンゲリオン)のアスカのコスプレをして、ライブで一番目立ってやろうと考えました。

初めて女装したときのアスカコスプレ(写真=本人提供)

――メイクは自分で?

りんりん 自分でメイクはできないから、バンドメンバーの女の子にやってもらいました。でも、今よりメイクは薄いし、ウィッグを被っただけだったから、誰が見ても男だとわかると思っていたんです。けど、いざライブが始まってステージに上がったら、客席から「あれ、女の子だよね?」という声が聞こえてきて。

「意外とわからないもんなんだな」と面白く感じたのを覚えています。それから1年後のライブでもコスプレをしました。今度は綾波レイをやったんです。

「誰この人?」「知らない」女装したら周りの人に気づかれず…

――元々、変身願望や女装への興味があったんでしょうか。

りんりん 最初はただのパフォーマンスです。地味だからちょっと目立ちたいという理由だけでした。バンドメンバーもボクのコスプレを見てゲラゲラ笑いながら「可愛いー」とか言っててウケがよかったので、それから年に1度、ライブのときにコスプレするのが定番になって。

――あくまでライブパフォーマンスの一環で女装をしていたと。

りんりん そうです。でも3年目の時、いつも通りメンバーの女の子にメイクをしてもらって、そのままライブハウスに入っていったら、みんなボクだってわからなかったんです。内輪のライブだからほぼみんな知り合いなのに、「誰この人?」「知らない」みたいな顔をされて。

 ボクはあえてしゃべらずに黙ってたんですけど、だんだん周りがざわつき始めたので「俺だよ」と言ったら、「なんだ、りんりんじゃん!」って驚かれました。「女装おもしろいな」と思いはじめたのは、そのときくらいからですね。