「オレだって急に出て行くわけにはいかない。それは分かるだろう」

「それなら今後は私のやることに邪魔しないでね」

 それから加奈は何度も無断外泊を繰り返すようになった。カズヤくんの面倒も見ないようになった。

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「ご飯が家になくて、力が出ない」

 カズヤくんは学校を休みがちになり、他の児童が半袖に衣替えをしていく中、夏が近づいても長袖のままだった。

 7月にヒロユキと離婚が成立すると、加奈は勤務をフルタイムに切り替え、「これからは家賃7万7000円もママが払っていかなければならない。いい子でお留守番しててね」と言って、与田と逢瀬を繰り返し、週に2日は泊まっていくようになった。

 与田は加奈に子どもがいることは知っていたが、「息子は親族らが面倒を見ている」という言葉を信じて、加奈とセックス三昧していた。与田のアパートは2人の愛の巣になっていた。

写真はイメージ ©getty

 学校では、カズヤくんが「ご飯が家になくて、力が出ない」「お母さんが家に帰ってこない」と訴え、担任はカズヤくんの髪がベットリしていることから風呂にも入っていないんじゃないかと思い、首の周りに垢がたまって黒ずんでいることから、ネグレクトを疑った。

 そこで家庭訪問して事情を聴こうとしたが、母親である加奈には一度も会えなかった。学校側としても何らかの対策を考えなければならないと思っていたが、まもなく夏休みになった。

 加奈はカズヤくんを連れて実家に行き、実母にカズヤくんの面倒を見てほしいと頼んだ。その間はまともな食事が与えられたが、夏休みも終盤になると、「帰るのが不安。1人の時間が怖い。ママと話せる時間が少ない。だけど、ママは仕事を頑張っているんだから、何も言えない。僕なんか生まれてこなければよかった」と言って、頭を掻きむしったり、体を引っかいたり、髪の毛を抜いたりするなど、精神的に不安定な様子を見せるようになった。

 実母はこのことを加奈にLINEで報告していたが、それでも加奈は態度を改めなかった。カズヤくんの夏休み中はほとんど与田のアパートに入り浸り、そこから会社に出勤していた。

 子どもより男。生き甲斐はセックス。そんな母親なのに、カズヤくんは加奈が責められないように、周囲にSOSを出そうとしなかった。食べるものがなくて困ったときには「冷蔵庫にあった古いものを食べて嘔吐した」と偽り、加奈の実家にカップ麺やレトルト食品を送ってもらったりしていた。

 発熱してしんどいときは加奈に体温計の写真を添付して〈熱が出て頭が痛い〉というLINEを送っていたが、加奈がまったく動かないのでガマンした。

 カズヤくんが体調不良を訴えようと、学校を休むと言おうと、加奈がカズヤくんを病院などに連れて行ったことは皆無だった。

 2学期になると、カズヤくんはほとんど登校しなくなった。なぜなら、加奈が週の半分以上、与田のアパートに入り浸り、帰ってこないからだ。

 9月の登校は4日だけ。10月に入ると、1日も登校しなくなった。

 カズヤくんは1日1回、家にあるカップ麺などを食べて食いつないでいた。健康状態にいつ異常が起きてもおかしくない状況の中、ついに事件が起こったのだ。

次の記事に続く 《懲役は…》「保護された少年はみそ汁もご飯の食べ方もわからなかった」不倫相手と会うために子供を2週間も育児放棄した“25歳の母親の末路”(2024年の事件)

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