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日本建築はなぜ今でも世界トップレベルで闘えるのか

日本建築はなぜ今でも世界トップレベルで闘えるのか

アートな土曜日

2018/06/16
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 続いて「超越する美学」。「もののあはれ」に代表される日本の美意識はもちろん建築スタイルにも及び、シンプルを極めた静けさが木造や打ち放しコンクリート建築に表れている。谷口吉生《鈴木大拙館》は模型からも凛とした静けさが伝わる。「安らかなる屋根」では、独自の屋根様式に着目。深い軒がつくる陰は、いつだって日本ならではの美を感じさせてくれる。

 自然を大胆にデザイン化するさまを見る「建築としての工芸」、繰り返しのリズムが人に美しさを感じさせる「連なる空間」、東洋と西洋のいいところ取りを難なくこなした例が見られる「開かれた折衷」とセクションは進む。なるほどこれらのキーワード、どれも日本建築を他地域のそれとはっきり画する要素だ。

 

千利休の茶室も体感できる

 さらには「集まって生きる形」「発見された日本」「共生する自然」とセクションは続き、ひと巡りすれば日本建築はもとより、日本文化そのものを可視化して見せてもらえたような感触が得られる。そう、建築こそがその地域の文化のかたちであり、「美の基準」なのだと改めて知れる。

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 もうひとつうれしいのは、「観る」にとどまらず建築を体感できる展示があること。千利休の作とされる茶室《待庵》が原寸大で再現してあり、内部へ入り空間を味わえるようになっている。たった2畳の空間なのだけど、そこには日本の美が満ち満ちている。ぜひ実地に体験してみたい空間である。

原寸再現された伝千利休《待庵》の内部
日本建築はなぜ今でも世界トップレベルで闘えるのか

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