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先輩から言われたことは全部「はい!」

大久保 まずひとつは知り合いが誰もいない(笑)。周りは先輩ばかりだし、そもそもヒデさん(中田英寿選手)、ゴンさん(中山雅史選手)は対戦相手としては知っているけど、話したこともない。テレビで見るスーパースターと変わらないですよ。

 だけど、みんな温かく迎えてくれた。特にゴンさんなんかは若手をいじるの大好きですからね(笑)。

 ただ、練習に余裕はまったくなかった。とにかく死に物狂いでついていくことが精一杯だった。もうね、先輩から言われたことは全部「はい!」ですよ(笑)

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©文藝春秋

増島 それは多くの選手が本著のなかでも語っています。たとえば名波さん(名波浩選手)はカズさん(三浦知良選手)や井原さん(井原正巳選手)についていくことに必死だったそうです。ものすごい重圧のなかで、それでもチームにいたいという気持ちが強かった。

大久保 すごくわかります。そもそも練習が楽しいんですよ。苦しいしキツいけど楽しい。やっぱり強い選手に囲まれているっていう環境は非常に大きいです。

 僕は代表では、伸さん(小野伸二選手)と一緒でしたが、ベルベットパスなんて呼ばれているパスを受けるのは本当に心地いい。トラップしやすいんです。もう自分のもとにボールが来た瞬間にゴールが決まると確信する。やみつきになりますね。いつまでも味わいたい感覚です。

何をやってもシュートが入らない時に考えていたこと

増島 フォワードというポジションの選手に、我々は非常に自己主張が強い印象を持っていますよね。得点を決める要なわけですから。フォワードに対する思い入れなどはどういったものがありますか。

大久保 まずは楽しいということ。シュートって決まるときはあっさり決まるし、バイオリズムのように、今のコンディションなら、もちろんメンタルも含めて、絶対決まるからどんどんボールを回してくれってなる。一方で決められないときは本当に決められない。何をやってもシュートが入らない。ただ、じゃあどうしたら決まるようになるか、それを考えるのもまた楽しいんです。

増島 周囲がスランプだって騒ぐほどネガティブにはなっていない?

大久保 むしろそういう時こそ燃えますよね。なにしろそうやって考え抜いて決めたゴールは頭のなかが真っ白になるような快感がある。シュートを撃つこと自体は恐怖でしかない。失敗したイメージがつきまとうんです。失敗するほうが多いから。それでも99回オフサイドでも、1回成功するならチャレンジしたい。その1回で天国なんです。

増島 今年のロシアW杯は、これから本戦がはじまるわけですが、現状非常に厳しい状況になっているといえます。メディアからの批判も強いです。嘉人選手から見てどうですか。

©JMPA