善意の面を被り“社会貢献”
笹川良一氏は1899年、大阪の造り酒屋の長男として生まれた。大阪茨木市立豊川小学校卒。ノーベル賞作家川端康成と同級生だったという。川端氏の目には笹川氏がどう映っていたのだろうか。
1925年、地元村議会議員に立候補当選。地元の軍部に接触し、大阪の顔役になった。1931年、右翼政党国粋大衆党を結成した。子分に大物フィクサー児玉誉士夫氏がいた。笹川氏はイタリアのムッソリーニをこよなく愛し、子分に黒シャツのユニフォームを着せていた。まさに気分、外見はファシストだった。満州国が建国されると、あの清王朝のラストエンペラー皇帝・溥儀とも会見していた。さらに東洋のマタ・ハリと呼ばれ日本帝国関東軍のスパイ・川島芳子とも交際していたらしい。
アヘン売買、女性、豊富な軍事物資、満州鉄道、関東軍の後ろ盾――それが笹川氏や軍人・石原莞爾が暗躍する旧満州国の姿だった。
第二次世界大戦が終結。笹川氏はGHQ（米占領軍）によって、A級戦犯容疑で東条英機らと共に巣鴨プリズンに3年間放り込まれた。しかし彼は東条内閣の政策に反対したため、極東軍事裁判所は不起訴とした。
巣鴨を出たあと、笹川氏は競艇に目を付けた。そして競艇のてら銭を基に造船の振興、公共福祉に貢献するための公益財団法人「日本船舶振興会（後の日本財団）」を立ち上げた。
戦後娯楽の少ない時代、ギャンブル好きな労働者たちは、レース予想紙を片手に赤鉛筆を舐め舐めレース場に通った。とりわけ熱中ギャンブラーたちは競艇に入れ上げた。その結果、大借金。家計は傾き、夜逃げ。家庭は崩壊した。競艇、競輪、オートレースは家庭を壊す敵だとのイメージが世間に定着した。
なんとかこの負のイメージを払拭しようと笹川氏は、モータボート競争の収益金を、「福祉・文化の発展」の建前で、財団を通じて国内はおろか海外まで撒き散らした。同時に、献金先を決める絶対的決定権を背景にして政財界のドンとして階段を上りつめた。こうして笹川氏は、戦後の大物中の大物として、
1995年に亡くなるまで、日本の各界に睨みをきかせていたのだ。
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