全国では、応援歌の練習そのものを取りやめた高校もある。
かつて実施されていた「応援練習」に対して苦情もあった長野県の進学校・上田高校は、「応援練習」自体を取りやめることにした。
10年程前に上田高校全日制を卒業したC子さんは、苦々しい表情で当時を振り返る。
「上田高校を受験する前は『応援練習』のことは知りませんでした。応援歌の存在を知ったのは入学前のオリエンテーションで、校歌と応援歌の入ったCDと歌詞カードを渡されて、『応援練習があるよ』と言われました。実際に、入学後からすぐに応援練習があり、2年生の時には自ら応援委員会にも入っていました」
C子さんは1年生のときは応援練習に全く違和感を持っていなかったわけではないものの、「叱られたり怒られたりすることで成長できると当時は信じていた」という。そこで2年生になると、応援練習を主導する応援委員会に入った。
「応援委員会は誰もやりたがりません。生徒会が3年生から2年生に引き継がれる時に、応援委員会に関わる4つの役割につく人がなかなかみつかりませんでした。幼なじみが役員を決める役職で苦労しているのを見て、応援委員会の委員長に手を挙げたんです。後に委員長に適任な人が見つかり、私は副委員長になりました」
「威圧的にふるまうことが応援団的には『かっこいい』と思っていた」
新入生が入ってくる4月までに、C子さんは応援練習をどう行うかの練習をしていた。C子さんが副委員長だった年は、1日約30分の練習を5日間という日程だった。1日目は教室でCDを流すだけだが、2日目から4日目まではピロティに新入生を集めて校歌や応援歌を歌わせたという。5日目は場所も校庭に移った。
「CDプレイヤーを先生から借りたり日程を調整したり、忙しく準備をしていました。応援練習の時、応援団はみんなの前に並んで太鼓をたたいたり、『声を出せ!』と叫んだりします。当時は新入生に対して威圧的にふるまうことが応援団的には『かっこいい』と思っていたんです。応援団にはサイズの小さい学ランが用意されておらず、その時に応援団には男子が入るものだという前提に疑問を持ちました。
一方で、引継ぎの際も応援委員会としては前年を踏襲した練習をやるべきだという方針でした。実は応援練習には台本があり、『声を出せ』『声が小さい』『前を向け』などの罵倒も、あらかじめ決まっているんです」

