卒業するまで応援練習に疑問を持たなかったC子さんだが、進学した大学でのある経験をきっかけに「あれは新入生に対するパワハラだったのではないか」と思うようになったという。
「大学の体育会系の部活でパワハラを受けたのがきっかけでした。大学1年生のとき、上級生から些細なことで怒られ、連帯責任を強いられました。合宿では朝、昼、晩の食事の席に細かいルールがあり、それを調整するのが1年生の仕事なのですが、できないと責められました。同級生と話し合ってやるのですが他の仕事もあって睡眠時間やお風呂の時間が削られて……。それでも先輩たちからは叱責され続けました」
「私のせいで多くの人に辛い思いをさせたのではないかと後悔しています」
部活のストレスが限界を超え、C子さんは2年生になる前に退部、4年生の時に大学を中退して実家に戻ることになった。それからハラスメントについて勉強するなかで、高校の応援練習に思い当たったという。
「完全な加害者はいないと思います。新入生の頃は被害者だった人が、加害者になってしまう構造に疑問を抱きます。あの仕組みに飲み込まれて、当時の私は『いいこと』だと思ってしまったんです。私のせいで多くの人に辛い思いをさせたのではないかと後悔しています。でも自分がやってしまったことをなかったことにはしたくないんです」
上田高校ではその後も応援練習は続いていたが、今年から名前を「校歌練習」に変更したという。経緯を問い合わせると、以下のような回答だった。
「今年から応援練習ではなく、校歌の練習という時間に変えました。コロナ禍で応援練習ができなくなり、復活しようという声もありましたが、厳しい応援練習をする時代ではないという声もあり、試行錯誤しながらここに至るという感じです。今は日数も短くなり、規模が小さくなっています」(上田高校・校長)

