「怖いと思うなら出なくて良い」と校長は答えたが…

 校長との話し合いの席で、Bくんは自分の意見を主張した。

「校舎の外で話したのですが、他の生徒はおらずBと私だけで、職員は数名いました。Bは校長に『机をひっくり返されて泣かされて、心を傷つけられた女の子の気持ちを考えたことがありますか。黒板を叩いて威圧するのは、社会通念上パワハラにあたる。社会では許されない行為を教育の現場でさせるとしたら、この高校も大した高校じゃないですね』と言いました」

 Bくんの主張を聞いた校長は「怖いと思うなら出なくて良い」と答えたという。Bくんはそれ以降の応援歌練習をボイコットするようになった。しかし、ボイコットしたのはBくんだけだった。

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 Bくんは校長との話し合いの中で、翌年以降は新入生に対する応援歌の練習で威圧的な言動をやめ、褒める方向で実施させることを約束させた。しかし翌年度の入学式の日、その約束が守られていない様子を目の当たりにしたという。

「威圧的な言動をやめるはずの応援歌練習で、応援団が怒鳴りながら1年生に廊下を走らせていたのを見たようです。それを見たBは前年の約束を反故にされたと気づき、私に泣きながら助けを求めてきたんです」(父親)

応援歌練習が行われた水沢高校の体育館 関係者提供

 校長は異動で代わっていたが、父親は再び話し合いに臨んだ。

「同席していた応援団担当顧問が『話し合っても平行線になるから会う必要がない』と話し合い自体を拒否しようとしましたが、Bは『平行線になると最初から決めつけるってことは、何を言っても聞く気がないのですか』と聞きました。

 1年生のときにはBが1人で話していましたが、Bとの約束を反故にされたことに腹が立っていたので、私も『説明するまで帰らない』と苦情を伝えたら、校長が『もう少し時間をくれないですか』と言ったんです」

 結局、水沢高校では21年度を最後に、威圧的な応援歌指導がなくなったという。水沢高校に問い合わせると、現在も応援歌練習はあるものの、雰囲気は大きく変わったという回答だった。

「現在では、応援団の指導のもと大きな声で歌いましょうとはなっています。過去には厳しい応援歌練習はありました。しかし厳しい練習はパワハラという認識ですので、もうなくなっています。今は、厳しい応援歌練習はしていません」(水沢高校・教頭)