「香川真司は大丈夫なのかという声もありますが?」
西野朗に監督が交替しても、状況が好転したとは言えなかった。一気に主力組とはいかず、パラグアイ戦までサブ組が続いた。非公開練習も行っているので全てではないが、取材陣が目にすることができた戦術練習において、香川が主力組でプレーしたのは一度だけ。ほとんどは本田圭佑がプレーするトップ下の控えか、宇佐美貴史がいる左MFの控えだった。
5月31日に行われたテストマッチ・ガーナ戦前日には、「香川真司は大丈夫なのかという声もありますが?」と、記者からの直接的な質問もあった。これに対し本人は「逆に、どう思います?」。パラグアイ戦後には「良くここまでコンディションを戻した」と称えられると、「3カ月間試合はしていなかったけれど練習してこなかったわけじゃない。どれだけ良いトレーニングをするかに集中していた」と、苦笑いして一蹴。コンディションはもう問題ない、別の話をしようとでも言いたげだった。
10番を背負う香川の責任と自覚
何も香川は、自分自身のコンディション調整だけを考えて、W杯初戦を見据えているわけではない。チーム作りにおいても初戦に照準を合わせること、点ではなくて線で見ること、段階的に変化していることを強調する。パラグアイ戦でのプライオリティはどこにあったのか聞くと、こんな答えが返ってきた。
「もちろん勝つに越したことはないですけれど、それ以上にチームとしてどれだけスイス戦から修正して、チームとしてどう攻守で戦うのかがより大事だった。結果として4点入りましたけれど、それ以上に過程が大事で、(0−2で敗れたテストマッチ)スイス戦からどう切り替えてやったか、どうチームとして修正できたかという内容をもっと見る必要があると思います。
11人メンバーが変わると言うのは(酒井高だけは違うポジションで2戦連続先発)なかなか簡単なことではないので、みんながピッチ内で励ましあいながら、前向きに鼓舞をしながらできた。ミスしてもトライを続けられたけど、それは味方のサポートがないとできないこと。ただ本番はうまくいくことといかないことがあるだろうから、想定しながら準備を続けたいと思います」
メンバー落ちの憂き目も、負傷も経験した。長谷部誠のように主将を務めるわけでもなければ、声で引っ張るタイプでもない。それでも2大会連続で背番号10を背負う香川は、それだけの責任がついて回ることを強く自覚している。数々の言葉が、それを物語っているように思う。W杯の舞台で香川は、どのような形でピッチに立ち、何を表現するのだろうか。