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崖っぷちからのW杯 香川真司が語った「危機感」と「責任」

崖っぷちからのW杯 香川真司が語った「危機感」と「責任」

2018/06/17
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 ロシアW杯前、最後のテストマッチとなった6月12日のパラグアイ戦、フル出場した背番号10・香川真司は躍動していた。2アシストしただけでなく、時間の経過とともに動きは軽快になっていき、終了間際にダメ押しとなるチームの4点目を決めた。4-2の勝利に貢献。記者から「初戦コロンビア戦、(この日プレーした)トップ下で先発できると思う?」などという身も蓋もない質問が飛ぶのも、仕方がないかと思わせる活躍だった。ちなみに香川の回答は「監督に聞いてください」というそっけないものだったが……。

 香川のここまでの道のりは簡単ではなかった。W杯初戦に先発するかどうかより、そもそもW杯メンバー入りするかどうかすら危ぶまれてきた。

 2月に左足首を負傷。その後、復帰を試みては悪化、痛みを感じて再検査ということを2度繰り返し、負傷から3カ月後、5月14日のリーグ最終戦でようやく実戦復帰した。とはいえ出場はわずか15分間のみ。怪我の状態について西野朗監督は「選手生命を左右する」と表現したが、香川は「そんなに大袈裟なものではない」と言い続けた。リハビリ中から「6月19日に照準を合わせている。しっかりまたトレーニングをするし、テストマッチもあるので問題ない」と初戦のコロンビア戦を見据えていた。

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自身2度目のW杯の舞台に立つ香川真司 ©文藝春秋

ハリルホジッチに語っていた「危機感」

 もっとも、香川のW杯行きが危ぶまれてきたのは怪我だけが原因ではない。怪我をする前から崖っぷちに立たされていた。昨年11月のベルギー遠征に招集されなかったことは象徴的なできごとだった。この時のメンバー落ちの理由は、ドルトムントで調子を落としているからとされた。しかし実際はその直前の10月、香川がハリルホジッチ監督にチームについての話をしたことも、関係していたのかもしれない。当時、香川はこう語っていた。

「やっぱり(ハリルホジッチ)監督ともっとわかりあっていかないと。選手と監督との温度差は、やはりもっともっと詰めていかないといけない。一番大事なのはワールドカップですから。もちろんチームっていうのは監督のもと、監督を信じてやっていくのは当たり前ですけど、でも選手自身が感じたこと、チームとして感じたことをもっと徹底して詰めたい。なあなあにしてると痛い目にあうと思うので、危機感をもってやっていきたいです」

中村俊輔の後「日本の10番」を背負っている ©文藝春秋

 メンバーを外れたのはこの後だった。多くの選手が、ハリルの前で話し合いをしようとすると制止される、などと明かしていることから考えると、香川にとっては手応えのあるやりとりであっても、前指揮官にとってはどうだったのか。決して面白いやりとりではなかったのだろう。