冒頭でとりあげたフィンランドで撮影中のドラマ『BLOOD & SWEAT』で、杏は同国を代表する俳優ヤスペル・ペーコネンとともに刑事を演じ、来年、WOWOWで放送予定である。海外の作品ではこれ以前にも、世界各国の気鋭の女性監督と女優のタッグによる短編7作で構成された映画『私たちの声』(2023年公開)の1編、呉美保監督の「私の一週間」で主演(「Anne Watanabe」名義)を務めた。
『私たちの声』は主題歌が2023年のアメリカのアカデミー賞の歌曲賞にノミネートされ、杏も呉監督とプロデューサーとともに授賞式に出席している。このときの歌曲賞には、ちょうど彼女がハマっていたインド映画『RRR』もノミネートされており、彼女は運命を感じながらパリからハリウッドに入ったという。賞を射止めたのは『RRR』のほうで、そのほかの部門でもアジア系の受賞が目立つ回となった。
アカデミー賞に「戻ってきたい。自分自身の評価で」
杏はこのとき、映画制作やアメリカ滞在を共有した監督たちとの諸連絡のため、SNSでチャットグループを作成していた。そのグループ名は「アカデミーに行きましょう」。何気なくつけた名前であったが、彼女は授賞式で抱いた《また、ここに戻ってきたい。次は、自分自身の評価で》との気持ちを忘れないよう、その後も変えずにそのままにしているという(『波』2024年12月号)。
ちなみに、近年、YouTubeでたびたび親子で共演もしている父・渡辺謙は、44歳のときに『ラスト・サムライ』でアカデミー賞助演男優賞にノミネートされている。娘の杏もやはり40代を目前に控え、俳優としての新たな目標にオスカーを定めたことになる。日本からフランス、さらにフィンランドと、彼女の夢は活動する場の拡大にともないますます広がっていくようだ。
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