彼はこれからは週刊誌という紙媒体よりもテレビだと気づき、コネを頼ってテレビ朝日のワイドショーのレポーターとして画面に顔を出すようになる。その頃のワイドショーはタレントや俳優のスキャンダルを毎日のように流しており、民放各局のレポーターたちは競ってタレントを質問攻めにし、泣かせたりしていた。

 なかでも梨元氏は、ワイドショーの看板レポーターとしていつも会見場のほぼ中央に陣取り、あのギョロ目の眼力でタレントを見つめていた。彼の流儀は、マイクを渡される前にまずタレントの目をしっかりと見据える。指名されると同時に「恐れ入ります、梨本です」と挨拶する。しっかりと裏取りしてタレントに質問をぶつける。完璧な証拠がなければ僕が恥をかき番組を干される──と彼は語った。

 あの時代は『FOCUS』『FRIDAY』などの写真週刊誌や、『週刊新潮』『週刊文春』のスクープが芸能人のゴシップをすっぱ抜き、ワイドショーが後追いして記者会見となる手順だった。各民放には「モーニングショー」「3時のあなた」「トゥナイト」など、“チャンネル”を回すと必ずワイドショーがあった。

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被害者の父親が同席する「前代未聞の記者会見」

 なかでも印象深いのは、1983年の愛人のホステスを殺害し刑務所に8年服役した演歌歌手Kの記者会見だった。Kは出所後、殺害した愛人の郷里・岡山を訪ね、墓参りをして出所の報告をし会見を開いた。

 しかもその会見に殺された愛人の父親が同席するという、前代未聞の記者会見だった。視聴率のためとはいえ趣味が悪い。

 だが、何でもござれのワイドショーにも触れてはいけないタブーがあった。

次の記事に続く 「SMAP稲垣吾郎の逮捕」を“どの局も報じなかった理由”とは…芸能リポーター梨元勝(享年65)が生前に漏らした「芸能界のタブー」

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